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Book Review① みらいをクールに予測する『モビリティー革命2030』(前編)

2017年4月5日更新

モビリティー革命2030_web

2017年の幕開けに、「みらいのくるま」のことを考えるヒントがつまった本を読むというのはどうだろうか? 今回、ロータスタウン編集部がオススメしたいのは『モビリティー革命2030 ~自動車産業の破壊と創造~』という刺激的なタイトルの本。昨秋に発行され、専門的な内容にもかかわらず売れ筋上位にランクインした話題の一冊だ。

一般ユーザーでも楽しく読める
次世代車に関するビジネス書

これは、デロイト トーマツ コンサルティングという世界をリードするコンサルティング会社の複数の社員が書いた本だ。

ざっくりいうと、自動車産業に携わるヒトたち向けのビジネス本で、2030~2050年あたりのみらいのクルマ(ゼロエミッション化と自動化)の普及予測と、それによって起こる産業構造や市場の変化の予測がなされ、それにどう対応すべきかが述べられている。
つまり、クルマの進化の内容よりも、それを取り巻くビジネスの在り方のほうに重きを置いて書かれた本なのである。

実際、「ティッピングポイント」とか「コモディティー」とか「マネタイズ」とか「限界費用」とかの見慣れない経済用語がたくさんでてくる。正直、一般ユーザーにとっては、とっつきにくいところが多々あるといわざるを得ない。

ただ、だからといって、読まずにおくのはもったいない。こうしたマイナス要因はあるにせよ、一般ユーザーにとって興味深いことがいっぱい書かれているのも事実だからだ。

とくに、全編にわたってでてくるみらいのクルマの普及予測をはじめとした未来予測は、さまざまなデータの収集と分析によって打ちだされているだけに、けっこう真実味があり、いろいろ面白く感じられる。
「へえ、自分が◎歳になる13年後の2030年にはこんなクルマ社会になっているんだあ。すごいね」とか、「えっ、子どもが大人になる2050年ころには、そんなことになるわけ? ほんとかなあ、そうは思えないなあ」とか、あーだこーだとの感想がつい口をつくほどにそれは刺激的でさえある。そういう意味では、かなり楽しい一冊といえるのである。

2050年の販売は次世代車が
100%になるらしいのだが・・・

この本は、基本的に「パワートレーンの多様化」「クルマの知能化・IoT化(Internet of Things=身の周りのあらゆるモノがインターネットにつながる仕組み)」「シェアリングサービスの台頭」といった三つのムーブメントが引き起こす社会と産業構造の変化とそれへの対応の必要性について述べている。

一つ目の「パワートレーンの多様化」は、クルマが、エンジン車からHEV(ハイブリッド車)、PHEV(プラグインハイブリッド車)、ZEV(ゼロエミッションヴィークル=電気自動車、燃料電池車)へと移行することをいっている。
二つ目の「クルマの知能化・IoT化」は、主にクルマの自動運転化が進むことをいっている。
三つ目の「シェアリングサービスの台頭」は、カーシェアリング、ライドシェリングが進み、クルマが個人で所有するモノから、みんなで利用するサービスに変わることをいっている。

どれも現在進行形で起こっていることではあるが、三つ目が本格化するのは、日本ではまだまだ先のことになりそうだ。
ということで、とりあえずは、この本に書かれている一つ目と二つ目に関しての未来予測を少し見てみよう。

第1章「パワートレーンの多様化」では、「各国の新車販売台数に占める次世代車の割合」が、2030年にはPHEVが15%、ZEVが10%に達し、次世代車が全体の4分の1を占めると予測している。そして、2050年にはPHEVが14%、ZEVが86%に達し、なんとすべてが次世代車になると予測している。

次世代車の割合_web

※出典:『モビリティー革命2030』



そのうえで、デロイト トーマツ コンサルティングは、こんなことをいっている。
〈気温の2℃上昇を抑制する取り組みの必要性が声高に叫ばれ、国際的コンセンサスとなった今日、ガソリン車によるC0₂の排出は「喫煙はあなたにとって心筋梗塞の危険性を高めます」というパッケージの表示を眺めながら喫煙しているようなものだと言わざるを得ない〉

つまり、エンジンの咆哮とタバコの紫煙をこよなく愛した、マッチョな人たちへの商品供給は、社会的善の観点から2050年に否応なく終わる、あるいは終わるべきだと断じているのである。

まあ、いまの環境志向、健康志向の世の中の流れからして、さもありなんではある。さほど大きな驚きはない。
が、「ふーん、なるほどね」と思う一方で、「じゃあ、そのマッチョな人たちは、そのときどうやってマッチョ志向を解消するんだろうか?」との疑問も湧きでる。残念ながら、そのことに関しては、この本は一言も触れていない。経済優先の未来マーケティングにおいては、そうした少数派に関する慮りは不要だからだ。

ということで、以下は読書したうえでの独自の予測。

おそらく、2050年にすべてのエンジン車の販売は終わるにせよ、エンジン車はきっとこの世のどこかに存在しつづけるだろう。そして、いま、愛煙家のための喫煙ルームがあるように、エンジン車愛好家のために、ある特定の場所が確保され、そこで走行=C0₂の排出がなされるであろう。それは公的に認められたサーキットで行われるのかもしれない。あるいは、背徳の行為として広大な敷地を保有する資産家の敷地の一角で行われるのかもしれない。いずれにしても、そこには、疎まれながらも、一つのノスタルジックな物語が形成されることになるだろう。

デロイト トーマツ コンサルティングのクールな分析と筆致は、深い納得を誘う一方で、こんな風に読む側の想像の翼を大きく広げる手助けをしてくれる。面白い。

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