ロータスクラブが運営するクルマとあなたを繋ぐ街「ロータスタウン」
タウン・ギャラリー<今月のアーティスト>
2016年12月15日更新
写真・初沢克利
1974年、パリの街で撮った面白い姿をしたシトロエン2CV(ドゥシュヴォ)の写真である。当時、何台の2CVがパリの街を走っていたのだろう。フランスの国民車といっていいのかもしれない。
新宿の酒場で初沢氏がパリで一番印象に残った車だと言っていたのを思い出した。
このギャラリーで3回も登場している。
どの写真でも2CVはパリの街で存在感を出し、見る者にそれぞれ別な表情を見せてくれる。
実際の2CVは非力で扱いにくい車なのだが、それを超える魅力がこの車にはあるのだろう。パリの街で今でも走っているのだろうか。
同じ車を長く乗り続けるということは車との相性もあるが、男と女にある情のようなものもある。
知らない街に流れ着いた男と女がふとしたきっかけで、一緒に住むようになり、情のような気持ちが深まって離れ難くなる。最初はそんなに好きでなかったのに時間が経つにつれて、大切なものだったことに気づく恋もあるのだ。
実際はそんな気持ちというものは男と女が別れたあとにくるものであるが、その瞬間に一緒にいられたとしたら二人は幸せなのではないだろうか。
きっとシトロエン2CV(ドゥシュヴォ)は一緒にいるとそんな気持ちになれる車なのだ。
実際、この写真を見ると幸せな気持ちになる。
初沢氏の話によるとカフェの前の面白い車を撮ろうと構えていると、カフェから出た二人が乗り込みはじめた。面白い車だと褒めて一緒に撮らせてもらったという。
二人と話をすると大胆な装飾には2CVに対する愛があることがわかった。
車にはパンと野菜が積んであり、それはパリ近郊から持って来たらしく、撮ったのは朝市のある昼下がりだった。
二人は週に2回くらい運ぶのを手伝っていて、本職は電気職人で夫婦のようだったと初沢氏は言っている。
良い時代の雰囲気があり、車が持ち主のステータスになっていないのがいい。
この写真に感じるのは持ち主の2CVへの愛である。ランボー風に言えば持ち主と溶け合う2CVへの愛ということになる。
(文・渡辺久浩)
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