ロータスクラブが運営するクルマとあなたを繋ぐ街「ロータスタウン」
クルマのことならなんでもガイド
2016年9月30日更新
今月の達人
ユサワ自動車・湯澤孝典
こんにちは、栃木県にあるロータス店『ユサワ自動車』の湯澤孝典です。今回は「ダッシュボードに物を置かないで」という内容です。一見ライトに思えて、じつはけっこう重いお話。いつも助手席に彼女を乗せている人は必読です!
安全のために斜めになったダッシュボード
むかしのクルマのダッシュボードはコンパクトな矩形をし、上面はほぼフラットになっているのが大半でした。でも、いまのクルマのダッシュボードは手前から大きく湾曲し、上面は斜めにせり上がる形状のものが多くなっています。どうしてこうなったのか、みなさん、ご存じでしょうか?
あまり公にはされていませんが、じつは、
①「ドライバーから自車の先端を見えにくくする(ノーズの形状も関係)」、
②「物を置きにくくする」という2つの意図が、そこに込められているのです。
①に関しては、「クルマの先端が見えないと危ないじゃないか」と思われるかもしれません。でも、それはまったく逆で、そのほうが安全運転に繋がるという事実があったりするのです。ドライバーというのは、クルマの先端が見えると、先行車との距離が掴みやすくなるため、どうしても車間を詰めてしまいがちになります。ところが、先端が見えないと、先行車とどれくらい離れているかよくわからないために慎重になり、車間を多めにとるようになります。つまり、自車の先端を見えにくくすることによって、自然と追突事故の確率を低減させる効果を生んでいるわけです。
②に関しても安全が大きく係わってきます。いまやダッシュボードの助手席側にはエアバッグが普通に装備されています。となると、事故のときにエアバッグが開いたら、そこ置いた物が凶器となって乗員に向かって飛んでくる可能性があります。エアバッグが膨らむときの速度は100~300㎞/hといわれているくらいなので、その威力はすさまじく、当たったらただでは済みません。だからメーカー側は、簡単に物が置けないようにとダッシュボードに傾斜をつけているというわけです。
すなわち、クルマの形状や構造の決定においては、美しいデザイン如何も重要なのですが、その前に必ず安全性や快適性などに関する配慮がなされるということです。いまのダッシュボードの有機的かつボリューム感いっぱいの形状も、だから、単に伊達で決まったわけではないんです。
命とひきかえの安易なカッコよさ&便利さ
と、ダッシュボードの蘊蓄を語ったところで、ここからが本題。
日ごろ、私はお客さまのクルマの整備をやっているのですが、そのなかで、カッコいいからとダッシュボード全体を明るい色のモコモコのカーペットで覆ったり、便利だからと滑り止めマットを敷いて小物を置いたりしている方をときどき見かけます。これらは、前述した安全への配慮を完全に無視する行為といえ、非常に気になります。
私はそんなことをしているお客さまに対しては、その都度、「危ないからやめましょう」と警告するようにしているのですが、読者である会員のみなさんはどうでしょうか? もし、同様のことをやっていらっしゃる方がいたら、ぜひやめていただきたいと思います。
なぜ危険なのかは、もうだいたい察しはついていると思いますが、以下、改めて解説しておきましょう。
まず明るい色のモコモコのカーペットでダッシュボードを覆う行為。これには2つの危険性が潜んでいます。
一つは、ウインドウにマットの明るい色が反射して、前が非常に見えにくくなってしまうことがあげられます。先ほど自車の先端が見えにくくなっていると運転が慎重になって安全運転に繋がるという話をしましたが、前方の交通状況が見えにくくなるというのは、それとはまったく次元のちがう話。単に交通事故を起こす可能性を大きくしているだけです。
もう一つの危険性は、いわずもがなですが、万が一の事故のときに助手席用エアバッグがちゃんと開かなくなるということ。ほんと冗談抜きで、モコモコのカーペットは助手席に乗る人にとっての死の覆いとなってしまう可能性があります。やめましょう。
次にダッシュボードに小物を置くという行為。みなさん、助手席側の斜めになっているところにわざわざ市販の滑り止めマットを敷き、その上に木製のティッシュボックスやレーダー探知機、スマートフォンなどを置いているわけですが、さっきもいったように危険極まりありません。それらはエアバッグが開くと同時に乗員を襲う凶器に変わってしまいます。いくら便利だからといって、それは命をかけた便利さであって、決してニコニコ笑ってやれることではありません。やめましょう。
私は現在、彼女募集中なのですが、もし彼女ができたら、絶対になにも置かない素のままのダッシュボードのクルマでドライブデートするつもりでいます。そうしなかったら、それだけで恋人失格だと思うからです。みなさん、ともにダッシュボードのことをしっかりと念頭に入れて、やさしい恋人、いや、やさしいドライバーをめざしましょう!
お店紹介
ユサワ自動車:1979年に創業した栃木県栃木市にあるロータス店(全3店舗)。創業者の湯澤善市会長が掲げているモットーは「地元のお客さまと美しい環境を大切にする」というもの。息子である湯澤孝典社長(31)もそれを踏襲&発展させながら商売を展開している。2015年には環境指向型整備工場として運輸局長表彰を受賞。
住所:栃木県栃木市西方町真名子1113
電話:0282-92-8377(代表)
HP:http://yusawa.co.jp
関連キーワード
クルマのことならなんでもガイド
今月の達人協同/協同バス・鈴木貴大[第3回]中国・BYD社製の電気バスの品質の高さを心の底から認めた協同/協同バス社長の鈴木貴大さんは、その電気バスの日本…
2021.12.23更新
クルマのことならなんでもガイド
今月の達人共栄自動車商会・小林祐樹デリカD:5は、2007年に発売されて以降、常に堅調な販売実績を残してきています。2019年2月のビッグマイナーチェンジ後…
2019.12.05更新
クルマのことならなんでもガイド
今月の達人くるま生活・井上康一女性ドライバーの皆さん、今日もハッピー&ビューティフルなカーライフを送ってますか?今回のテーマは「ネイルがきれいに映えるカー…
2020.05.12更新
クルマのことならなんでもガイド
今月の達人宮本モータース・宮本毅こんにちは。新潟県魚沼市にあるロータス店『宮本モータース』の宮本毅です。私が担当する今シリーズでは、縁の下のチカラ持ちならぬ…
2018.04.13更新
クルマのことならなんでもガイド
今月の達人協同/協同バス・鈴木貴大[第2回]㈱協同/㈱協同バス社長の鈴木貴大さんは、電気バスには興味があったが、中国製品にはあまり良いイメージを持っていな…
2021.12.09更新
クルマのことならなんでもガイド
今月の達人共栄自動車商会・小林祐樹三菱自動車のカーラインナップにおいて、根強い人気を獲得しているデリカD:5。前編では「使い勝手のいいミニバン」という側面を…
2019.12.05更新