画像提供:横浜ゴム(株)
10年以上前からEVに対応したタイヤを模索し、開発を行ってきた横浜ゴム。
2020年には、欧州の自動車メーカーの「プレミアムハイパフォーマンスカー」「プレミアムハイパフォーマンスSUV」「プレミアムEV」をターゲットとした、新車装着用タイヤとしてADVAN Sport V107の出荷を開始した。
そして、2023年秋から欧州、2024年2月から日本で、よりEVを意識したADVAN Sport EVの販売に踏み切った。
ADVAN Sport EVはどんな特長を持つタイヤなのか、……インタビューを続けた。
ADVAN Sport V107をベースに
よりEVを意識して開発
——では、改めてADVAN Sport EVの性能面の解説をお願いします。
岩坪 まず前提の話からさせてもらいます。このADVAN Sport EVは先進的であるにせよ、これまでになかった新しい技術でつくられたタイヤではありません。弊社が100年にわたって磨き続けてきた「走る」「曲がる」「止まる」を最適化するための技術を生かしながら、EVに対応した技術やアイデアを付加して生まれたタイヤです。
——EV対応タイヤとはいっても、ガソリン車のタイヤとまったく別のものではないと受け止めればよいでしょうか?
岩坪 そういうことです。その上で、EV対応タイヤへの基本ニーズとしては、「高荷重対応」「摩耗・偏摩耗対応」「低電費対応」「ノイズ低減対応」が挙げられます。ADVAN Sport EVは、既存技術が生み出しえる先進のプレミアムタイヤに、EVが求める4つの基本ニーズへの対応策を付加したタイヤです。具体的に言えば、すでにプレミアム&ハイパフォーマンスなEVの新車装着用のタイヤとして高い評価を獲得しているADVAN Sport V107をベースとして、そういったEVの履き替え用の市販タイヤとして、よりEVを意識した開発を行い、生れたタイヤがADVAN Sport EVなのです。
——プレミアム&ハイパフォーマンスなEVとしては、テスラ モデル3などがあります。ああいったEVに対応できる性能を持った履き替え用タイヤということですね。
岩坪 まさにそうです。ということで、性能の説明ですが……EVが求める4つの基本ニーズを順番に追いながら、ADVAN Sport EVならではの特長を挙げつつお話ししたいと思います。
重さと高トルクに対応する
頑丈で摩耗が少ない構造
岩坪 一つ目の「高荷重対応」についてですが、ADVAN Sport EVは大容量バッテリーを積んでいるために重いプレミアム&ハイパフォーマンスなEVを支えるに十分な性能を持っています。
——例えばテスラ モデル3なら2トン以上の重さがあるので、それに耐える必要があるわけですね。
岩坪 先ほどADVAN Sport EVはADVAN Sport V107をベースにしているとお話ししましたが、実績のあるADVAN Sport V107の非対称トレッドパターンを踏襲することによって、高荷重に対応しています。
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——ADVAN Sport V107の非対称トレッドパターンを使うことで、ユーザーとしても信頼感や安心感がわくと思います。
岩坪 そう思っていただけるとありがたいです。さて、二つ目の「摩耗・偏摩耗対応」。なにしろEVは、重い上に高トルクで走ります。そのため、一般のタイヤでは、摩耗・偏摩耗が懸念されます。しかし、ADVAN Sport EVは、ADVAN Sport V107ゆずりの材料設計と構造設計によって摩耗・偏摩耗を抑えています。構造設計面では、先ほどから出ている非対称トレッドパターンも「摩耗・偏摩耗対応」に貢献しています。
——カタログを拝見すると、非対称トレッドパターンは、ウェット性能にも優れているようですね。
岩坪 ええ、イン側の太いストレートグルーブが高い排水性を発揮し、濡れた路面での安全走行をもたらします。そして、ドライ性能については、アウト側の高剛性ワイドショルダーが貢献します。
転がりやすく
かつ静かなタイヤ
——三つ目の「低電費対応」はどうでしょう?
岩坪 「低電費対応」は、EVのバッテリーの電力消費を抑え、航続距離の伸長に寄与するための性能です。それを可能とするために、材料として横浜ゴム独自のコンパウンドを採用することで転がり抵抗の低減を図っています。このコンパウンドには、本来ゴムとは相性の悪いシリカ(二酸化ケイ素)が均一に配合されています。それが低電費につながる転がり抵抗の低減を実現し、さらにはウェット性能・耐摩耗性の向上にも貢献しています。
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——電費の良さは、車両の性能だけでなく、タイヤが負うところが大きいわけですね。では、最後、四つ目の「ノイズ低減対応」についての説明をお願います。
岩坪 「ノイズ低減対応」は、ADVAN Sport EVの最たる特長と言うことができます。モーター駆動のEVは、エンジン車のようなエンジン音が響かず、車室内が極めて静かです。ただ、それだけにタイヤノイズが悪目立ちしがち……。そこでわれわれは、タイヤ自体に高い静粛性を持たせるべく、タイヤ内面に「SILENTFORM」という吸音スポンジを貼り付けることにしました。これにより、走行時にタイヤが発する擦過音や共鳴音の大幅な低減に成功しています。プレミアムでハイパフォーマンスなEVに乗るお客さまには、車室内の静粛性を実現するADVAN Sport EVを、ぜひ選択していただきたいと思います。
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横浜ゴムのEV対応タイヤ「ADVAN Sport EV」の実力
(前編)「E+」を打刻したタイヤ。それがEVに適したタイヤである証です。
(中編)プレミアム&ハイパフォーマンスなEVに最適のタイヤをつくりあげました。
(後編)これからの時代、「EVにはEV対応タイヤ」という認識の広がりが必要です。