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クルマのトラブル「もしも」マニュアル
2024年8月16日更新
【今回のやっちゃったストーリー】
雲ひとつない晴天の週末。Lさん(26歳・会社員)は、愛車の助手席に憧れの女性を乗せて海辺のドライブに出かけた。
目指す海に到着したのは午前11時。ランチまで時間があったので、公営の広々とした駐車場にクルマを駐め、しばし砂浜を散策することにした。
彼女は車中で着ていた薄手の黒いカーディガンを助手席に置き、Tシャツ姿になって外に出た。彼女がほのかに漂わす色気にドギマギしつつ、Lさんは平静を装って会話を盛り上げることに集中した。このデートがうまくいけば、正式に交際を申し込むつもりでいた。
散策は1時間ほどで終わらせる予定だったが、Lさんの努力のかいあってか会話が弾み、気がつけば2時間近くも経っていた。
「あ、もうこんな時間だ。ランチに行こうか」
2人は駐車場へと踵を返した。
と、突然、消防車のサイレンの音が聞こえてきた。その方向を見ると駐車場あたりからもうもうと黒煙が立ち上っている。
「え、誰かのクルマが燃えた?」
歩を早めて駐車場へ急ぐと、1台のクルマの室内から勢いよく炎と煙が吹き出しているのが目に入った。それは紛れもなくLさんの愛車だった。
「な、なんで……」
消防士たちが白い泡をかけて消火作業を行う様子を、Lさんは呆然としながら見守った。
鎮火後、Lさんと彼女は消防士から出火原因についていろいろと尋ねられた。2人ともまったく心当たりがなかった。
だが、話を進めていくうちに、彼女が脱いだ黒いカーディガンの上に飲みかけの水が入ったペットボトルを置いたことがわかり、それが出火原因ではないかということになった。消防士は「水の入ったペットボトルが太陽光を集めるレンズのような役割をし、近くの燃えやすいモノに火を付けることがあるんです」と解説してくれた。
Lさんは、ばつが悪そうな顔をしている彼女を、とりあえず電車で先に帰した。自分も早く帰りたかったが、室内が燃えたクルマをレッカー移動させる必要があったので現場にとどまった。
1時間ほどしてロードサービスのレッカー車が到着し、クルマをLさん行き付けのディーラーへと運んで行った。
翌日、ディーラーの行くと、フロントアドバイザーは「この状態では直すのは難しいですね。全損扱いで廃車にするしかないのでは……」と言う。確かにその通りかもしれないが、Lさんは意気消沈した。
ただ、不可抗力の車両火災は車両保険の補償対象になると知らされ、わずかながらも救いを感じた。全損の補償は時価額分しか出ないようだったが、なにもないよりはずっといい。それを原資にまた新しいクルマを買おう。
一方、絶望的なのは彼女との関係だった。その後、電話してもLINEしてもすべてスルー。彼女とはもう駄目かもしれない(涙)。
車両火災は
年に約3500件
意外に多い車両火災。
2022年中の件数は3409件にも上っています。
出火原因としては、排気管によるものが最も多く595件。それに交通機関内配線の344件、電気機器の282件が続きます。
Lさんのクルマで発生したようなペットボトルによる「収れん火災(太陽光が屈折して1点に集まって起こる火災)」は統計に出ないほど僅少です。年によっては発生しないこともあります。ですが、たまにではあれ、実際に起きる火事。車内でのペットボトルの扱いには慎重さが求められます。
後編では、具体的なクルマの出火原因および対策などについて概説します。
よく晴れた日。水が入ったペットボトルのせいでクルマが燃えちゃった!(前編)
よく晴れた日。水が入ったペットボトルのせいでクルマが燃えちゃった!(後編)
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