ロータスクラブが運営するクルマとあなたを繋ぐ街「ロータスタウン」

みらいのくるまの「ただいまのところ」情報

BookReview(55)『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』―2026年から続々登場する日本の本気のBEVに期待せよ!

2024年6月28日更新

BookReview_55-1

『間違いだらけのクルマ選び』でおなじみの島下泰久氏が著した本。

2023年4月の上海モーターショー、同年10月のJAPAN MOBILITY SHOW、2024年1月のCES(Consumer Electronics Show)という三つの大展示会で抱いた感想と知り得た情報を基に、日本の自動車メーカーの未来への危惧と期待を述べている。

BEV化に伴う
クルマの進化に焦点

まず、上海モーターショーでは敗北感を覚えた。

中国の各メーカーはどこも完成度の高いBEVを展示していた。それらは著者には〈BEVシフトというタイミングあるいはチャンスを用いてのクルマ自体の進化〉、すなわち〈クルマ2.0の勃興〉を感じさせるものと映った。

対して我ら日本のメーカーは、現実味と魅力の乏しいBEVのコンセプトカーをいくつか展示する程度。BEVシフトへの対応ができていない上に、それに伴うクルマの新しい価値の提案ができておらず、著者に「中国にはもうかなわないかもしれない」との危機感を抱かせた……。

この危機感は、しかし、半年後に東京で開催されたJAPAN MOBILITY SHOWで少し解消された。

中国のBYDによるBEVの魅力的な実車展示が目立つ中、日本の各メーカーも頑張っていた。特にレクサスが出展していたLF-ZCが輝いて見えた。これは2026年ごろにデビュー予定のBEV。中国勢よりかなり遅れての登場となるが、バッテリーはもちろん、知能化の部分でも著しい進化が期待でき、時間的劣勢をカバーするに余りありそう。この勢いが本格化すれば、いずれ中国勢をはじめとする他メーカーを凌駕する可能性は小さくはないと思わせた……。

そして著者は、2024年の米国ラスベガスでのCESで、日本のメーカーへの期待をさらに膨らませた。

そこには2040年にグローバルで100%BEV/FCEV化することを宣言したホンダが、2026年から市場投入する新しいBEVである0シリーズのコンセプトカーを展示していた。

BEVだからこそできた斬新なエクステリアと居住性の高いインテリア。進化させたバッテリーによる走行性能も十分で、かつ自動運転/先進運転支援システム、ソフトウェアディファインドモビリティの実力も申し分なさそう。まさにクルマ2.0を体現する1台。クルマのことをよく知るホンダそして日本のメーカーから、こうした魅力的なクルマが続々でるようになれば、勢力図は再び大きく塗り替えられるに違いないと感じた……。

実は著者は、クルマの脱炭素化については当面はHVやPHEVも含めたマルチパスウェイ路線でいくのが正解と考える派。いずれガソリンエンジンを搭載するクルマがなくなる運命だしても、すぐにすべてをBEVに転換させればOKと考えるのは浅はかだと思っている。そうなるまでには、ちゃんとした進化のロードマップが不可欠だろう、と。

〈求められているのは単にパワートレインを内燃エンジンから電気モーターとバッテリーに置き換えることではない。―略― 語るべきは、知恵を絞るべきは、BEVをはじめとする新しいテクノロジーによってクルマをどう進化させていくかというビジョンでありストーリーである。―略― 日本の自動車メーカーは、そして日本自動車工業会曰く550万人にも上るという自動車業界は間違いなく、それをリードしていける力を持っている〉

BEV派にも、アンチBEV派にも必読の1冊である。

BookReview_55-2

 

『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』
・2024年5月20日発行
・著者:島下泰久
・発行:星海社

  • ロータスカードWeb入会
  • ロータスカードWeb入会
  • 店舗検索
  • 店舗検索
  • 楽ノリレンタカー
  • 楽ノリレンタカー

あわせて読みたい

  • BookReview⑬『2019年版 間違いだらけのクルマ選び』(前編)‐「愛」をもって未来のクルマを語ろう!

    みらいのくるまの「ただいまのところ」情報

    BookReview⑬『2019年版 間…

    クールな経済分析だけではクルマの本質はわからない電気自動車(EV)や自動運転車といった未来のクルマの存在感が大きくなるにつれて、多くのメディアが今後のクルマ…

    2019.01.29更新

  • 次世代エコカー勉強会〈9時限目〉自動運転の「ただいまのところ」④車線のはみだしを防ぐLKS

    みらいのくるまの「ただいまのところ」情報

    次世代エコカー勉強会〈9時限目〉自動運転…

    走行中にうっかり車線をはみだすと大変な事故を起こす可能性が高い。今回紹介する自動運転のための技術の一つLKSは、それを高度な仕組みで防いでくれる。まだ進化途中だ…

    2016.10.27更新

  • 【NEWS】ロータスクラブが日本EVクラブに加盟 ~ 全国1,000以上の整備会社がEVシフトを支援

    みらいのくるまの「ただいまのところ」情報

    【NEWS】ロータスクラブが日本EVクラ…

    5月22日に宮城県で加盟発表会を開催自動車整備業界をけん引する全日本ロータス同友会(通称:ロータスクラブ)は、EV(電気自動車)を中心にエコカーの普及活動を…

    2018.05.29更新

  • 第29回 日本EVフェスティバル レポート③―「EVへの充電は昼に行う」というパラダイムシフトが起きる!

    みらいのくるまの「ただいまのところ」情報

    第29回 日本EVフェスティバル レポー…

    本当は、EVへの充電は、夜ではなく昼に行うほうがいい――。「EVシンポジウム」の後半は、この話題で持ちきりとなった。昼充電の習慣がCO2削減に貢献する基…

    2023.12.14更新

  • 2021全日本EVグランプリシリーズ 第5戦 レポート②―序盤に展開あるも、チャンピオンは嫌みなほどに強かった!

    みらいのくるまの「ただいまのところ」情報

    2021全日本EVグランプリシリーズ 第…

    予選時ほどではないが、雨は依然としてポツポツと降っていた。コース上は全面にわたって黒く濡れ、場所によっては水たまりもできていた。2021全日本EVグランプリシ…

    2021.08.27更新

  • BookReview⑩『EVと自動運転』‐ EVの普及は、テレビのブラウン管が液晶に変わったときのように進む!

    みらいのくるまの「ただいまのところ」情報

    BookReview⑩『EVと自動運転』…

    「100年に一度の変換期」の真の意味いまの自動車産業界は「100年に一度の転換期」にあり、そのキーワードは「電動化」「自動化」「コネクテッド化」「サービス化」…

    2018.08.07更新

< 前のページへ戻る