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みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
2024年5月15日更新
2.045㎞を27周して順位を競うALL JAPAN EV-GP SERIES 2024 第2戦の決勝。
午後4時5分にはじまったレースは、冒頭から大波乱の展開となった。
最後尾からのスタート
レッドシグナルがクリアになった瞬間、誰もがグリッド最前列の2台のテスラ モデルSプラッドによる爆速ホールショット合戦を期待した。
が、ポールの位置にいたKIMI選手(#23 GULF RACING)のプラッドが微動だにしなかった。開幕戦でのフライングに続くスタートの大失敗。それに虚を突かれたか、2番手グリッドの余郷敦選手(#100 Team TAISAN)のプラッドも一瞬始動が遅れた。
この予想外の状況に最も素早い反応を見せたのは、2列目にいた3番手の地頭所光選手(#0 Team TAISAN)のテスラ モデル3パフォーマンス。グリッド上に留まったKIMI選手のプラッドの右脇をサッとすり抜け、トップで第1コーナーへ飛び込んでいった。しかも、コーナーを出るあたりで後ろから来た余郷選手に道を譲り、後続をブロックする構えをつくった。決勝前に「余郷選手が早い段階でKIMI選手の前に出て、僕がそれを全力でサポートする形にしたい』と語っていた理想の態勢を、開始わずか数秒で完成させていた。
余郷選手の今季初優勝の確率が、これで一気に高まることとなった。
一方、KIMI選手は14台すべてに抜かれてから最後尾でスタート。端から見れば、優勝すなわち2連勝はほぼ絶望的と思われた。
恐るべき追走劇
KIMI選手は、しかし、まったく諦めていなかった。
レース前に「決勝ではバッテリーの持ちを考えて7割のアクセル踏み加減で走る」と話していたのだが、イチかバチかの全開走行の挙に出た。
その速きこと一陣の風のごとし。
予選と同等のタイムを叩き出しながら、あっという間に11台をごぼう抜き。なんと、わずか3周目で3位にまで上がった。
さらに、その2周後には余郷選手の後ろでブロック走行していた地頭所選手をも難なくパス。トップをゆく余郷選手を射程圏内にとらえている。
プラッドのポテンシャルを見せつける、恐るべき追走劇だった。
1位余郷選手、2位KIMI選手、3位地頭所選手……。
しばらくこの順位のまま推移すると思われたが、さにあらず。今度はKIMI選手に思わぬ幸運が訪れた。
7周目で余郷選手のプラッドのレース仕様のブレーキが不調をきたし、突然スローダウン。KIMI選手は労せずトップの座の奪還に成功した。
しかも余郷選手のプラッドはその後ブレーキから煙を噴いてリタイア。レース後半は完全にKIMI選手が楽勝の流れになるものと見えた。
EV-GP史上初の逆転優勝
ところが、そうはならなかった。
2位のポジションにいた地頭所選手のモデル3が、KIMI選手の独走に待ったをかけたのだ。
ストレートでの速さを考えれば、明らかにKIMI選手のプラッドに分がある勝負。しかし、余郷選手を勝たせるべしとのチームオーダーのくびきから解かれた地頭所選手は、その実力をあますところなく発揮。ストレートでは離されるものの、絶妙のコーナリングで差を縮め、KIMI選手の真後ろに迫り続けた。
1000馬力のプラッドと500馬力のモデル3による大接戦。観客は、この想像だにしなかったバトルに大いに沸いた。
このバトルはレース終盤まで延々と続いた。だが、残り2周となったところで唐突に終わった。
後半、攻めに攻めた地頭所選手のモデル3のバッテリー残量がとうとう尽き、ゴールまでたどり着くのが精一杯となったのだ。
結局、前半に全開走行を続けたにもかかわらず、バッテリーに余力を残していたKIMI選手が悠々とトップでチェッカーを受けることに。
JEVRAのEVレース史上、ポールシッターが決勝スタートで最後尾となり、そこから総合優勝したのは初めての展開。そんな物語をサーキットに刻み、KIMI選手は堂々の2連勝を果たしたのであった。
注目の土屋選手は3位
ピットに凱旋したKIMI選手は、チームの面々から熱い祝福を受けた。
祝福に穏やかな笑みで応えていたKIMI選手。今回の大逆転勝利をこんなふうに振り返った。
「前半はスタートの大失敗をカバーすべく予選並みの全開スピードで走った。トップに立って一息つけると思ったら、今度は地頭所選手の攻めがきつくなり、アクセル7掛けのつもりが8掛けで走らざるを得なくなった。そのため、最後はバッテリーの過熱によるスピード抑制が出て結構ひやひやした。今回は前回と違ってなんとか勝てたという感じ。2連勝できてホッとした」
惜しくも総合2位に終わった地頭所選手は、悔しさと喜びがない交ぜとなった敗戦の弁を語った。
「余郷選手のクルマが駄目になった時点でもう僕しかいないと思いフルプッシュしたが、ラスト2周でバッテリーが0%になってしまい、残念な結果に終わった。非常に悔しい。ただ、コーナリングに秀でたモデル3が直線番長のプラッドと互角に渡り合えるところを見せられたのはよかった。観客の皆さんもいいドラマを堪能できたのではないか。次戦、よりストレートが短い袖ヶ浦では、絶対にリベンジを果たしたい」
総合3位は土屋圭市選手(#1 Team TAISAN)。初参戦にもかかわらず表彰台ゲットはさすが。最終コーナーを立ち上がる際にたびたび縁石を越えて土煙を上げ、観客を沸かせていたが、あれこそはドリキンの面目躍如であろう。今後もたびたび参戦し、魅せるレースを期待したい。
総合4位はシングルモーターの非力なモデル3でEV-2クラス(モーター出力150kW以上250kW未満)に個人参戦していたモンド・スミオ選手(#55 モンドコーヒー)。これで昨シーズンの最終戦から3戦連続の上位入賞となった。
これだけコンスタントに好成績が残せるのは、巧緻なドライビングゆえではあるが、本人によれば、モデル3の性能効果もかなり大きいとのことだった。
「実はモデル3のスタンダードレンジは全開に近い走行を続けても最後までバッテリー過熱によるスピード抑制が出ない。パワーが小さい分、そもそもあまり過熱しない。過熱したとしてもデュアルモーターのモデル3パフォーマンス用の冷却システムを使っているから、効率よく冷やされている模様。だから毎回、最後の最後までしっかり走り切れる。僕は、このシングルモーターのモデル3は、表彰台には届かないにしても、本当に楽しく
面白くレースができる1台だと感じている。この調子を維持し、次戦も上位入賞を狙いたい」
レースの楽しさ度合いはモーター出力の大きさに比例しない。EVレースは、思っているよりもずっと奥が深いのである。
続く付編では、今戦に新規参戦したドライバー、車両たちを紹介する。
ALL JAPAN EV-GP SERIES 2024 第2戦レポート
(前編)予選のタイム争いは、プラッドのKIMI選手がレベチの速さでポールを獲得!
(後編)スタートで大失敗も、KIMI選手が全開ごぼう抜きで2戦連続のWin!
(付編)EVレースがより面白く華やかに。時代の風に乗ったニューカマーが続々参戦!
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