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クルマのトラブル「もしも」マニュアル
2024年3月26日更新
【今回のやっちゃったストーリー】
都会のアパートで1人暮らしをするHくん(20歳・大学生)は、超がつくほどの新しい物好き。
ある日、通販サイトで電動キックボードを購入することを決めた。いち早く話題のモビリティに乗りたかったし、免許なしで乗れるというのも魅力だった。Hくんはまだバイクの免許もクルマの免許も持っていなかったのだ。
サイトで見つけたお気に入りの商品は10万円と高かった。だが、親からの仕送りとアルバイトで貯めたお金の合計から家賃と生活費を引けばちょうどそれくらいあった。Hくんは「今月、食費を切り詰めればギリギリなんとかなる」と考え、ポチッと購入ボタンを押したのだった。
商品は3日後に届いた。説明書には、公道を走るにはナンバープレートを付けて、人身事故の被害者への損害補償を行う自賠責保険に加入する必要がある旨が記されていた。
調べたら、ナンバープレートは市役所で無料で入手できるとわかった。自賠責保険は、コンビニで1年分の保険料数千円を払えば加入できるらしい。ただ、Hくんは電動キックボードの代金10万円を一括払いにしたことで、一時的な金欠状態。自賠責保険の数千円の支払いができなかった。
「お金が入る来月まで乗るのを待たなきゃいけない? そんなの嫌だよ」
Hくんは、「ちょっと試すぐらいなら問題ないだろう」と考え、翌日の早朝、ナンバーと保険加入がない状態で少しだけ近所の歩道を走ってみることにした。走行時にはヘルメット装着が努力義務となっていたが、ヘルメットを購入する余裕もなかったので、当然のようにノーヘル走行となった。
試走は思った以上に快適だった。全力でこぐ自転車より遅かったものの、立ったままスーッと前に進む感じがものすごく気持ちよかった。これで街中を走れば注目の的になるだろうと確信した。心底「買ってよかった」と思わずにいられなかった。
が、この快走も、ほどなく暗転する。
アパートへの帰路、歩道を走行していたHくんは、前を並んで歩いていた親子とおぼしき男性と小さな女の子の右横をすり抜けようとした。ところが、女の子が歩道の植え込みのほうに何かを見つけたらしく、急に向きを変えてHくんの前に飛び出してきた。
Hくんはブレーキをかけてとっさに衝突を避けようとしたが間に合わず、ハンドルがもろに女の子の体に当たってしまった。
女の子は前のめりで地面に転倒。その後、すぐに半身を起こしたが、座った姿勢のままで大泣きとなった。大事には至らなかったようだが、膝に擦り傷ができ、少し血がにじんでいた。
一緒にいた父親らしき男性は、女の子に駆け寄り必死の介抱。そのままHくんを鬼の形相でにらみ、言葉にならない怒声を発した。
Hくんは「す、すみません、その子が急に前に飛び出してきたものだから…」と、言い訳がましくわびを入れたが、許されるはずはなく、男性はさらに激しくHくんをなじった。そして、怒りのトーンのまま110番。「娘がキックボードの男にひかれてケガをした。急いで来て! 救急車も呼んで!」と助けを求めた。
数分後、パトカーと救急車が順次到着。簡単な状況確認の後、とりあえず親子は救急車で病院へ。Hくんはその場にとどまり、現場検証が終わるのを待った。
警官は現場を一通り見終えた後、Hくんにこう言った。
「電動キックボードは自転車走行帯がない歩道を走ってはいけません。あなたはそのルールを破って事故を起こした。通行区分違反で罰金の対象となります」
「それから、ナンバープレートが付いていませんね。番号表示義務違反で、これも罰金の対象となります」
「それに、加入義務がある自賠責保険も入っていないのではないですか?もしそうなら自動車損害賠償保証法違反になります。これは刑事罰の対象にもなる重大な違反ですよ」
「ついでに言うなら、あの女の子のケガの治療費は、Hさん、あなたが支払わなければならなくなると思いますよ」
ゲゲゲゲゲ。
後日、Hくんは反則金&自動車損害賠償保証法違反の罰金と、女の子のケガの治療費の支払いを迫られた。とても自力では払えない額。仕送りとアルバイト代だけではどうにもならなかったので、Hくんは実家の父親に電話して泣きついた。
「かくかくしかじかの理由でお金が必要になった。お願い、送金して!」
しばらく黙って話を聞いていた父親の第一声は「この大馬鹿者めが!」だった。
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