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クルマのトラブル「もしも」マニュアル
2023年12月26日更新
【今回のやっちゃったストーリー】
Fくん(22歳)は、小さな広告会社の新人営業マン。
会社の社員は8名で、やることが多い割に給料は安かった。だけど、好きな仕事だったし、付いている先輩がいい人だったので売上ノルマ以外にストレスを感じることはなく、結構楽しくやれていた。
うるさい規則が少ないのもよかった。例えば、社用車の個人使用がOKで、残業で終電がなくなったら社用車で帰宅することが許されていた。休日も申請さえすれば、ガソリン補充を条件に自由に使えるようになっていた。
これに関して先輩は、「社長は、社用車の私的利用は福利厚生のひとつだという考えなんだ。『最近流行のシェアリングの会社版だよ』なんてうそぶいてもいたな(笑)」と話していた。
理由はどうあれ、まだ自分のクルマを持てないFくんにとっては、とてもありがたい緩さと感じられた。
しかし、Fくんは、ある週末、会社の軽自動車を借りて海釣りに出かけた際に事故を起こし、結果的に泣きを見ることになる。
その事故は土曜日の未明に起きた。クルマに釣具一式を載せて海を目指して走っていたところ、ヘッドライトに照らされた目の前の道路を小動物が横切った。はっとしたFくんは、ハンドルを左に切ると同時に急ブレーキを踏んだ。それにより、なんとか小動物をはねずに済んだ。だが、クルマは道路脇に立っていた標識の柱にぶつかってしまった。
Fくんにケガはなかったものの、ぶつかったクルマの左ヘッドライトは割れ、フロント部分も凹んでいた。そして、標識の柱も曲がってしまっていた。
人生で初めての事故だった。Fくんはどう対処していいかわからず右往左往した。同時に「個人利用中の事故だから、壊れたクルマと標識の修理代は自分が弁償することになるかな?」と金銭的な心配も頭をもたげた。
悩むこと約5分。結局、どうにもならなかったので、未明にもかかわらず先輩に電話して指示を仰ぐことにした。
無理矢理起こされて事情を聞かされた先輩は、眠そうかつ不機嫌な声だったが、しっかりアドバイスをしてくれた。
「まず、警察に電話して事故処理しろ。そして、グローブボックスに車検証と一緒に保険会社の書類が入っているから、そこに書かれている緊急連絡先に電話して事故報告しろ。そうすれば、壊れたクルマと標識を修理するための保険金が下りるようになるから。たぶん、お前が弁償する必要はないと思うよ」
Fくんは、先輩の指示どおりに動き、事故処理を済ませた。壊れたクルマは保険会社のレッカー車で整備工場に運んでもらった。気分はローなままだったが、最悪の事態を収拾できたことで少し安心できた。自分で弁償しなくてもいいという事実も心をちょっとだけ軽くしていた。
だが、週明けに出社すると、思いがけない試練が待ち受けていた。
社長に事故に関しての報告とお詫びをしにいったとき、社長は不注意な運転をいさめた後でFくんにこう言ってきたのだ。
「会社で入っている自動車保険でクルマと標識は直せるにしても、保険を使うことで来年からの保険料が高くなる。私用を許可していたのは俺の懐の広さなわけだが、今回のような予定外のマイナスは困るんだよ。そうだなぁ……来年の君の昇給を無しということにして穴埋めしてもらうという手もあるが……」
これは本気なのか冗談なのか。社長の真意をはかりかねたFくんは、しばらくの間、沈んだ心持ちで過ごすこととなったのであった。
仕事中の事故なら
通常は会社の保険で対応
社員が社用車で交通事故を起こし、誰かに損害を与えてしまった……。
それが仕事中のことであれば、事故の損害の賠償責任は社員と会社にあり、多くの場合は自賠責保険と社用車に会社がかけている自動車保険の保険金によって賠償が行われます。
なぜ会社が連帯責任によって自社がかけている保険を使うかというと、会社には社員を雇用している使用者としての「使用者責任」と、会社が所有している社用車で事故が起きたことに対する「運行供用者責任」があるからです。
※運行供用者責任が問われるのは人身事故の場合であり、物損事故は別です。
ただし、場合によっては、被害者に対する損害賠償を上記のように保険で行った後、損害賠償した金額の一部を会社が社員に求償するというケースもあります。
では、社用車を私用で使って交通事故を起こし、誰かに損害を与えたとしたら、どうなるのでしょうか?
今回のストーリーでは、Fくんが壊した標識の損害賠償と社用車の修理代は、会社が入っている自動車保険を使うという流れです。
仕事ではなく私用で使っていたのに、なぜそうなるのか。後編でその理由を見ていくことにしましょう。
社用車を私用で使って物損事故。その損害賠償責任は誰にあるの?(前編)
社用車を私用で使って物損事故。その損害賠償責任は誰にあるの?(後編)
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