ロータスクラブが運営するクルマとあなたを繋ぐ街「ロータスタウン」
みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
2023年11月8日更新
スタート直後に
大渋滞が発生
暑い西日が射す午後3時45分、コース2.436キロを25周して順位を争うALL JAPAN EV-GP SERIES 2023 第4戦「全日本袖ケ浦EV60㎞レース大会」の決勝がはじまった。
シグナルがオールクリアになった瞬間、テスラ モデル3が何台も固まって第1コーナーへと飛び込んでいく様は圧巻だった。
ただ、どういうわけだか、いつもよりはスピードが出ていない感じもした。
何があったのか。
後で聞いたところによると、先頭にいたTeam TAISAN(以下、TAISAN)の久保凛太郎選手(#0)が「初めてのEVレース。序盤は様子見だな」と考えスタートダッシュを抑え気味にしたらしく、それが最初のスローダウンにつながったようだった。
しかも、そのスローダウンは、アクセル全開で走り出していた後続ドライバーたちをハイスピードのまま渋滞に突入させるというリスキーな状態も生んでいた。渦中にいたある選手は「1周目の第1コーナーあたりから、みんなグチャグチの中で怖々走っていた」と証言している。
結局、1周目から4周目まで、よくいえば超近接バトル、悪くいえば大混雑が続いた。
その間、瞬間的な抜きつ抜かれつは当たり前。何度か接触も起きた。2周目の8コーナー手前でスエヒロ自動車商会(以下、スエヒロ)のTAKAさん選手(#35)が、余郷選手(#2)のクルマの左後部にガツンと当てたアクシデントは、その最たるものとなっている。
その余郷選手は、直後の3周目でアニー@ニキ選手(#39)の間隙を突き2位に浮上している。ぶつけられたことでクルマの挙動が多少不安定になったらしいが、そこは技術と気力で克服したようだ。
今回のレースが混戦となるのは事前にわかってはいた。だが、まさか初っぱなからこういう波乱の展開になるとは思ってもいなかった。
オーバーテイクは
一瞬の夢に終わる
4周目が終わったあたりでようやく車間が広がり出し、レースはいったん落ち着きを取り戻したかに見えた。
このときの上位の順位は、久保選手、余郷選手、アニー@ニキ選手、TAKAさん選手の順。地頭所選手(#1)のモデル3はやはり調子が悪いらしく、先頭集団からずいぶんと離され5番手を走行していた。
しかし、続く5周目の途中から、またもやレースが動き出す。
トップにいた久保選手が、突如、余郷選手を先に行かせたのだ。それは、TAISANのチームオーダー「余郷を勝たせるべし」が発動された瞬間だった。
これ以降、久保選手は2番手のポジションに居座り、後続のスエヒロの2台、アニー@ニキ選手とTAKAさん選手をブロックする役割に徹した。
そのブロックは、「さすが現役プロ」とうならせるほどに見事なものだった。
当初、3番手にいたアニー@ニキ選手は久保選手を果敢に攻めた。だが、絶妙なスピード調整、ブレーキング、ハンドリングによって始終道をふさがれ続け、ついには8周目で力尽きスローダウンを余儀なくされた。
9周目から代わって3番手に立ったTAKAさん選手は、「プロ軍団を打ち負かす」という当初の目標どおり、より厳しく久保選手を攻めた。何度阻まれても諦めずに攻めた。その追撃はレース終盤まで延々と続いた。
その間、トップに立っていた余郷選手はどんどん車間を広げて優勝を盤石なものにしていて、優勝争いへの興味は薄れつつあったのだが、2位争いはそれをカバーするほど十分に面白く見応えのあるものとなった。
事実、残り9周となった16周目のヘアピンカーブでは、一瞬、TAKAさん選手が久保選手をオーバーテイクすることに成功し、観客を沸かせている。
だが、それも本当に一瞬の出来事に過ぎなかった。その後すぐに久保選手は抜き返しに成功。最後まで現役プロの久保選手のブロックは鉄壁だった。
結局、トップのチェッカーは10車進分ほど先行していた余郷選手が受けることに。以下、久保選手、TAKAさん選手、アニー@ニキ選手の順でのゴールとなった。
TAISANが思い描いていたとおりの展開と結末。
レース直後のピット内で、TAISANの千葉泰常代表が2人のドライバーを抱き寄せて会心の勝利を喜んでいる姿が印象的だった。
勝利の陰にあったもの
レース後、2人のドライバーを祝福しながらコメント取りを行った。
まずは久保選手のコメント。「見事なブロック、ナイス2位」と言うと、にやりと笑って、こんな秘密を教えてくれた。
「実は僕、結構ギリギリなブロックをやっていた。でも、スエヒロの2人ともうまいドライバーなので、そこはわかってくれると思い、やり続けた。最終的にそれがいい結果につながってホッとしている」
どうやら、観る側にはわからない、かなり高度な駆け引きがあったようだ。
次に余郷選手のコメント。「今季初勝利おめでとうございます」と言うと、汗だくの顔を破顔させながら、こんなふうに勝因を語ってくれた。
「途中、追突もあったが、久保選手の見事なブロックがあったお陰で勝つことができた。ある意味、総合力の勝利。僕自身としては、予選が終わった後、ぐっすり眠って頭をリフレッシュさせたのがよかったかな(笑)。熱くなりながらも終始冷静に走れた」
ガチになった王者TAISANの強さは想像以上にハンパないのである。
挑戦者スエヒロの
巻き返しに期待
これで、TAKAさん選手有利とされていた年間総合チャンピオンの行方は本当にわからなくなった。
残り2戦、TAISANのモデル3複数台投入作戦は続く模様で、その中で、余郷選手が続けて高ポイントをゲットし、TAKAさん選手がポイントを拾いそこなえば、立場は逆転することになる。
今季中に、別チームがモデル3より速いテスラのモデルSプラッドを投入してくるといううわさがあり、それが現実となればTAISAN勢も思いどおりのレース運びができなくなるかもしれない。だが、対スエヒロでいえば、現状、TAISAN側にいい流れがきているのは間違いない。ALL JAPAN EV-GP SERIES 2023は、シリーズ終盤になり、目を離せない展開になった。
次戦、レースそしてチャンピオン争いをより面白くするためにも、ぜひスエヒロ勢の巻き返しを期待したい。もともと彼らは真摯なチャレンジャー。きっと何か斬新なことをやってくると信じたい!
ALL JAPAN EV-GP SERIES 2023 第4戦レポート
(1)王者TAISANがモデル3を3台投入し、ガチで逆転チャンピオンを狙いにきた!
(2)初EVレースの久保選手が、現役プロの実力を発揮して初ポールを獲得!
(3)久保選手の巧妙なブロックが効き、余郷選手が今季初優勝を遂げる!
(4)20名のテスラ車オーナーが「カルガモ走行会」に参加!
みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
米国生まれのテスラ・モデル3は、ここ数年、AllJAPANEV-GPSeries(全日本EVグランプリシリーズ)において絶対的な王者であり続けている。1…
2022.11.10更新
みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
本当は、EVへの充電は、夜ではなく昼に行うほうがいい――。「EVシンポジウム」の後半は、この話題で持ちきりとなった。昼充電の習慣がCO2削減に貢献する基…
2023.12.14更新
みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
ロータスクラブの提携企業である横浜ゴムは、2024年2月、日本国内でEV(電動車)対応のサマータイヤ「ADVANSportEV」を発売した。世界の中で、E…
2024.09.26更新
みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
ALLJAPANEV-GPSERIESの王者を生み出してきたTeamTAISANの千葉泰常代表が、6月7日に逝去された。6月29日(土)に袖ヶ浦フォレ…
2024.07.11更新
みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
「100年に一度の変換期」の真の意味いまの自動車産業界は「100年に一度の転換期」にあり、そのキーワードは「電動化」「自動化」「コネクテッド化」「サービス化」…
2018.08.07更新
みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
JEVRA(日本電気自動車レース協会)主催の2022全日本EVグランプリシリーズ(AllJAPANEV-GPSERIES)がついに開幕。4月23日に行われ…
2022.05.12更新