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クルマのトラブル「もしも」マニュアル
2022年12月6日更新
【今回のやっちゃったストーリー】
年金暮らしのOさん(66歳、男性)は、長年にわたってETCの利用を拒んできた。
理由は三つあった。
❶ETCを利用すると高速料金が現金払いよりも何割か安くなるようだが、高速道路を利用するのは月一ぐらい。ならば古い愛車に高いお金を払ってまでETC装置を付ける必要はないと考えていた。
❷料金徴収員から「お疲れ様」と声を掛けられなくなるのが嫌だった。ただでさえ、人間らしい交流が少なくなってきている現代。わびしい傾向には極力抵抗したいと思っていた。
❸友人のクルマに同乗してETCを通ったとき、バーがギリギリまで上がらずヒヤヒヤした。ドライバーを試しているというか、馬鹿にしているように思われ、好感が持てなかった。
頭の固い高齢者と言われればそれまでだが、Oさんなりに信念を持って非ETCカーライフを続けていたのである。
が、そんなOさんも、つい最近、とうとうETC利用者となった。
いったいなぜ?
理由は以下の三つである。
①東京の自宅から千葉の親戚の家で行われる法要に参加すべく、久しぶりにアクアラインを利用したところ、通行料金が3,140円もかかった。聞けばETC利用者なら800円で済むらしく、この差額にはさすがにショックを受けた。
②近年、料金所のゲートがほとんどETC専用となり、一般ゲートが一番端に追いやられてきている。大きな料金所では、そこに行き着くために多くのクルマが走る中を大きく迂回する必要が出てきており、危険性が増していると感じた。
③ここ2年あまりのコロナ禍で、他人と非接触でいることの重要性を痛感し、料金徴収員との親密なやりとりも避けるべき行為のひとつと思うようになった。
一貫性がない人間と言われそうだが、Oさんは「君子豹変」という言葉で自分の変節を正当化した。
さて、初めてのETCカーライフはどうだったかというと……ものすごく便利に思えて仕方なかった。とにかく料金所でいちいち停止することなくスイスイ抜けられるのが素晴らしかった。「これまでの滞留時間はなんだったんだ。まあ、バーが開くのが遅いのはいまだに気に入らないが、もっと早くからETC利用者になっておくべきだったな」。そう思うほどETCが気に入った。
しかし、そんな快適な状態も長くは続かなかった。ある日、OさんはETCレーンで気分がだだ下がる事故を起こしてしまう。
それは、法要で再び千葉の親戚の家に向かうべく、アクアラインを利用したときのこと。「今回は800円だ」と浮き浮きした気分で料金所を抜けようとしたら、前を走っていた初心者マーク付きのクルマが、ブレーキランプをパッと点らせて急停止した。Oさんは慌ててブレーキを踏んだが、間に合わなかった。料金が安く済むことの高揚感からか推奨スピード20㎞/hを超えて走っていた上、車間距離も詰めすぎていたので止まりきれず、ゴンっと追突してしまったのである。
後続車には迷惑と思いつつも、ハザードランプを点灯して待っていると係員が対応してくれ、2台は事故処理を行うことに……。リアがボコッと凹んだ前車からは、うら若き女性が首をさすりながら降りてきた。Oさんは、首の状態を気遣いつつ、彼女に「なんで、急停止したの?」と聞いた。すると「海ほたるで休んだとき、ETCカードを抜いたのを忘れてたの。それでバーにぶつかりそうになったんで停まっちゃった」との答えが返ってきた。それを聞いたOさんは、激しく脱力した。口には出さなかったものの「そんなつまらないミスで事故が起きた。どうしてくれるんだ」と心の中で彼女をなじった。
後日、事故の過失割合が追突側100%と判定されるに至り、さらにOさんは脱力した。もろもろの補償は加入していた自動車保険で賄うことになったので、大きな経済的損失はなかったものの、「なんでオレの過失割合が100%で、カードを挿入し忘れた彼女が0%なんだ。意味不明だし納得がいかない」と不満をもらした。ついには、「もうETCなんかやめて元の現金払いに戻ろうか。それなら前車が必ず止まることがわかっているから、あんな事故は起きないし、過失も問われない」と考えはじめたのであった――。
ETC利用率は約94%
高速道路を走る自動車のETC(ETC2.0含む)利用率は、2021年時点で約94%に達しています。
2001年にはじまったETCの一般利用は、10年ほどの間に着実に装置の普及と利用が進み、完全に交通社会に定着しているのです。
この順調な利用率の高まりには、以下の事柄が大きく影響していると考えられます。
●ETC利用車(者)には高速料金の割引がある
●支払いのために停止する必要がなく、便利でスムーズである
●現金払いをする煩わしさがない(支払い時だけでなくデータ処理も便利)
さらには、近年のキャッシュレス化も追い風となっていると思われます。
ちなみに、NEXCO東日本管内にある東京湾アクアラインの浮島ICから木更津金田ICまでの高速料金は、普通車の一般料金3,140円と高額ですが、ETC利用であればわずか800円で済みます(2022年5月現在)。かなりの差額です。この違いを見れば、Oさんならずとも、ETC利用への切り替えを考えるのは当然といえるでしょう。
ETCレーン内での急停止の
原因はカード未挿入が多数
さて、ETC利用率の高まりに伴い、特有の事故も数多く発生するようになっています。
特に多いのは、レーン内で急停止した車両に後続車が追突する事故です。
その原因としては、今回のストーリーのように「ETCカード未挿入でバーが上がらず急停止」が多数となっているようです。
以下は急停止した原因の割合を示すグラフ。事故原因の割合を示すグラフではありませんが、ここから追突事故が起こる可能性が大きいことは容易に想像できます。
こうしたケアレスミスが原因の急停止による事故を防ぐには、各ドライバーがETC対応をしっかり行う必要があります。
●高速道路を利用するときには、発進前にETCカードが挿入されているかどうかをしっかり確認しましょう。
●ETCレーンで後続する際には、「ETCレーン内では前のクルマが急停止する可能性がある」と意識し、前方に注意を払いつつ、十分な車間距離をとって、徐行(20㎞/h以下、何が起きても停止できる速度)して走るようにしましょう。
高速道路では、高速走行時の事故リスクだけでなく、低速走行時の事故リスクも念頭に置きつつ、慎重な運転を行うことが大事です。
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