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みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
2021年12月9日更新
コロナ禍が続き、クルマの電動化の流れが加速した2021年。
100年に一度の混沌の中、秋に予定されていた日本自動車工業会(会長:豊田章男氏)主催の東京モーターショーはあえなく中止となった。
だが、11月20日、日本EVクラブ(代表:舘内端氏)主催の日本EVフェスティバルは、「つながろう みんなでCO2削減」をテーマに無事開催されるに至った。
感染対策が行き届く小規模イベントであり、クルマの電動化にフォーカスした内容だったからこそ、開催が実現したといえるだろう。
今年で第27回目となったこのフェスティバル。当日は東京国際交流館プラザ平成を舞台に、電動車展示、EV&PHEV試乗会、ミニトークショー、自治体のクルマと環境に関する取り組み展示、EVシンポジウム開催といった「クルマの電動化をじっくり体験し、考えるイベント」の数々が行われた。
今回、我々は電動車展示で新型アウトランダーPHEVを眺め、EV&PHEV試乗会で小型EVトラックのELEMO(エレモ)に乗り、EVシンポジウムで注目発言に耳を傾け、現時点でのクルマの電動化のリアルを体感した。このレポートでは、3回にわたってその模様を紹介していく。
コンセプトモデルが
そのまま形になった
東京国際交流館プラザ平成の屋外に設置された電動車の展示スペースには、各メーカーが用意した最新の電動車や、手作りのコンバートEVなどがずらりと並んでいた。
その中で最も気になったのは、やはりロータスクラブと提携している三菱自動車工業の新しいアウトランダーPHEVだった。
発売前だったため、残念ながら試乗できず眺めるほかなかったのだが、現場にいた三菱自動車の担当者(以下、「MMC担当者」)から、先代アウトランダーからの具体的な進化の内容とその魅力について有意な話を聞くことができた。
——モデルチェンジしたアウトランダーPHEVは、フロントマスクに先代同様のダイナミックシールドを採用しているとはいえ、全体的に見た目の印象が大きく変わりました。なんというか、洗練された逞しさのようなものを感じます。
MMC担当者 ありがとうございます。この外観には、2019年のモーターショーで展示して好評を博したコンセプトモデルのエンゲルベルクツアラーのデザインのほとんどが反映されているからだと思います。
モーターとインバータの一体化などで
PHEVでの3列シートを実現
——今回はエンジン車がなくなり、PHEVだけのラインナップ。先代のPHEVにはなかった3列シートが設定されたグレードが用意されました。
MMC担当者 はい。先代のPHEVには2列シートのグレードしかありませんでした。前後のツインモーター仕様のため、後ろ部分ではモーターに付随するインバータなどのユニット類が嵩張り、3列シートにするスペースが取りにくい事情があったからです。新しいPHEVも前後のツインモーター仕様ではありますが、今回は後ろにあるモーターをインバータなどのコントロールユニットと一体化させたことで省スペース化したほか、他コンポーネントのレイアウト最適化などによって、3列シートを実現させることができているんです。もちろん、3列シートを倒せば、今まで以上に広い荷室が生まれます。総合的にかなり使い勝手がよくなっているといえます。
——もともと「PHEVにも3列シートが欲しい」という声は多かったのですか?
MMC担当者 先代のアウトランダーのお客さまは7~8割がPHEVを選び、残り2~3割がエンジン車でした。エンジン車にもそこそこ需要があったわけですが、よく調べてみると、エンジン車のお客さまの中には「本当は燃費がよくて環境にもいいPHEVを選びたかったが、PHEVには3列シートがないので仕方なくエンジン車にした」という方の割合が高いことがわかりました。普段はあまり3列目のシートは使わないにしても、例えば週末に子どものサッカーや野球のチームメイトを乗せて会場まで移動することもあり、そうしたこと可能にするポテンシャルを愛車に持たせておきたいという要望が多かったのです。それで今回、国内にエンジン車の導入をなくした理由は、PHEVに3列シートがあるグレードが設定されたからです。
街中走行ならEVモードでOK
——走りの面における進化はどうなんでしょう?
MMC担当者 バッテリーの容量が13.8kWhから20kWhに増大し、燃料タンクの容量も45ℓから56ℓに増えました。これによって、モーターとエンジンによる総航続距離が約800㎞から約1000㎞以上にまで伸びています。これは、あくまで理論上の距離であって、実走行距離と乖離するところはあるにしても、電動車の中でもPHEVのよさが際立つ数値といえます。ちなみに、モーターだけで走るEV走行の満充電での航続距離は、先代が57.6㎞だったところが83~87㎞にまで伸びています。これは日常的な街中走行なら、ほとんどEVモードだけで走れることを意味しています。
——もちろん三菱特有の堅牢なボディ剛性と四輪駆動制御の足回りで、走行性もいいわけですよね?
MMC担当者 もともと三菱車はボディ剛性に優れていることが自慢だったわけですが、新しいアウトランダーPHEVのプラットフォームは、日産とルノーとのアライアンスによる協同開発でさらに剛性を高めており、タイヤから路面にかかるトラクション性能の向上を高いレベルで実現しています。しかもそこに、三菱独自の四輪制御技術S-AWC(Super All Wheel Control)による四輪の駆動力・制動力を最適に制御する効果も加わるので、どんな道路状況においても高い次元での走行安定性がもたらされます。乗り味、走り味はさらに進化したと言えるでしょう。まだ発売前なので、試乗でそれを実感いただけないのがとても残念です。
環境性能と使い勝手は
電動車の中でPHEVが一番
——最後にひとつお聞きします。今、世界のメーカーからのBEV(バッテリーEV)の発売ラッシュが続いていて、近頃、なんとなくPHEVの影が薄くなっている印象があります。そんな中で改めてPHEVのよさを語るとしたら、どういうことになりますか?
MMC担当者 基本的に小さなバッテリーを積むシティコミューター的な使用が多い、軽クラスの電動車であれば、EVがいいのは間違いないところです。ですが、遠出などのドライブに使うことも多い、大きなバッテリーが必要となるミドルクラス以上の電動の乗用車であれば、PHEVにするのが最適解だと弊社は考えています。社会がカーボンニュートラルに向かっている中、クルマの製造からリサイクルまでのライフサイクル全体でCO2排出を抑える必要があります。そのLCAの観点からすると、再生可能エネルギーによる発電の割合が小さい現時点においては、製造時に電気をたくさん消費するバッテリーの容量をそこそこに抑えていて、日常はEVとして走れるPHEVのCO2排出量が一番少ないのです。しかも、エンジンで発電できるため総航続距離が断然に長く充電の心配がいらないというEVにはないメリットもある。すなわち、電動車の中で最も環境によく使い勝手もいいのがPHEVだということなります。新しいアウトランダーPHEVは、まさにそれを体現している1台なんです!
新型アウトランダーPHEVは2021年12月16日に発売の運びとなる。ここに掲載したMMC担当者の発言が気になった人は、ぜひ一度試乗してみてほしい。進化したPHEVはきっと期待に応えてくれることだろう!
第27回 日本EVフェスティバル レポート
① 新型アウトランダーPHEVは、総航続距離1000㎞以上を誇るベストな電動車!
② 小型電気トラックELEMOが「働くEV」を先導しそうな予感!
③ 「百万台EVプロジェクト」で、楽しく地球温暖化対策に乗り出そう!
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