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みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
2021年5月13日更新
『2021全日本EVグランプリシリーズ』(JEVRA主催)の第1戦が、4月10日(土)、快晴の富士スピードウェイで開催された。
今大会の話題の中心は、なんといっても高性能EVであるポルシェ タイカン ターボSによるシリーズ最上位クラス・EV-1クラス(モーター出力201kW以上)への初参戦。タイカンの国内レースデビューでもあり注目が集まった。
レースへの興味は、GULF RACINGのKUNI=国江仙嗣選手が駆るゼッケン36のタイカンが、昨シーズンまで圧倒的な強さを見せていたテスラ モデル3勢とどんな戦いを繰り広げるのかに集中した。特に3年連続年間チャンピオンである東大生ドライバー地頭所光選手が駆るゼッケン1のモデル3(TEAM TAISAN東大UNテスラ)との一騎打ちには周囲から熱い視線が注がれていた。
〈予選〉
初参戦でいきなりレコードタイム更新
決勝のスターティンググリッドを決める予選は、午前10時15分にはじまった。
衝撃的な幕開けだった。
国江選手のタイカンは、タイヤが温まっていない状態の走り出しでいきなり2分を切る1分59秒646を記録。これまでの予選で2分を切ったのはわずか数台で、ベストタイムは昨シーズンに地頭所選手がテスラ モデル3で出した1分56秒829。軽く周回するだけで尋常ではない走りのポテンシャルを知らしめたのである。
タイヤが温まったタイカンは、さらに驚異の速さを見せつける。ホームストレートで地頭所選手のモデル3の時速223㎞を上回る236㎞をマーク。1分54秒882のレコードタイムを叩き出した。あまりの速さに会場の実況アナウンサーも興奮気味に叫ぶ。「ポルシェがつくる電気自動車はやっぱりすごい。1作目のEVでレコードタイムの更新だ!」。
地頭所選手も奮闘した。かつて予選のタイムアタックはバッテリーの過熱を避けるために3周以内で終わらせていたが、この日は4周目にもトライ。自身のベストタイムを1秒以上も上回る1分55秒779という好タイムを出したのである。
だが、それもタイカンにはコンマ897及ばない。結果、ポールポジションは記念すべきデビュー戦でレコードタイムを刻んだ国江選手のポルシェ タイカンが獲得することに。決勝のグリッドでは、フロントのエンブレムの跳ね馬が前方オールクリアの状態で第一コーナーを望む位置につくこととなった。
〈決勝〉
新王者誕生を予感させる異次元の走り
コースを12周して合計55㎞を戦う決勝は、夕刻の16時15分にスタート。
レースは予選に劣らず衝撃シーンが連続する、目の離せない展開となった。
スタートシグナルが消えた瞬間、モーター出力560kWで0-100km/h加速2.8秒を誇るポルシェ タイカンがスタートダッシュを決めると、トップのままあっという間に第一コーナーへと姿を消した。獰猛なまでに速いとされるモデル3をはるかに上回る異次元の速さだった。
昨シーズンまでは地頭所選手のマシンをはじめとするモデル3がホールショットを決めるシーンが繰り返されていたが、この日、それが遂に途切れたのである。
スタートの勢いそのままに、国江選手のタイカンは2周目に1分55秒885という予選に近い好タイムを記録。その後はペースを少し落としたものの、レース序盤で2位の地頭所選手のモデル3に4秒もの差をつけ、独走態勢へと入った。
王者モデル3危うし。新王者の誕生か──。レースを見守る者たちはみな、歴史が動く瞬間を目撃する予感に打ち震える。
だが、タイカンのレースは突如として暗転した。6周目に入ったところで、いきなりスローダウンをはじめたのである。
アクシデントやトラブルが原因ではなかった。市販EVの多くは、超高速走行を続けるとバッテリーの過熱を防ぐために自動的に加速が抑制されるようになっている。タイカンもその例にもれない。サーキットという場でレースを続けていた国江選手のタイカンは、加速抑制システムの陥穽にはまったのである。
辛抱強く2位につけていた地頭所選手は、その瞬間を見逃さなかった。強烈な加速をはじめると、7周目に入るホームストレートでタイカンをオーバーテイク。そのままぐいぐいと引き離し、逆に完全な独走態勢へと入っていった。
もちろん、地頭所選手のモデル3にもバッテリー過熱を防ぐ加速抑制システムは付いている。だが、これまで数多くのEVレースを走ってきた地頭所選手は、バッテリー熱の状態を加減しながらのドライビングに長けていた。そのうえ、マシンにはオリジナルのバッテリー冷却装置まで付いていた。すなわち、ほぼノーマルな状態で初出場していたタイカンのような唐突なスローダウンが起こり得ない状態をつくりあげていたのである。ある意味、起こるべくして起こった逆転劇といえた。
結局、地頭所選手のゼッケン1のテスラ モデル3はペースを落としながらの余裕の走りで優勝のチェッカーを受けることに。国江選手のゼッケン36のポルシェ タイカンは、終盤でほか3台のテスラ モデル3にも抜かれて5位でのフィニッシュとなった。最終的にトップ地頭所選手との差は1分以上も開いた。
今回、テスラ モデル3 対 ポルシェ タイカンの戦いの軍配は、完全にテスラ モデル3勢に上がった。だが、このレースではポルシェ タイカンがどのクルマよりも速いということが明らかとなった。今後、レース用のセッティングがなされ、ドライバーがEVレースの経験を積んでいけば、間違いなくテスラ モデル3を脅かす存在となるだろう。一瞬夢想した王座奪取のシーンを目にする日は、そう遠くないかもしれない。
EVレース、そしてテスラ モデル3 対 ポルシェ タイカンの戦いに関心をお持ちの方は、ぜひ現場で熱いバトルを観戦されたい。今シーズンの『2021全日本EVグランプリシリーズ』は全7戦。秋までに残り6戦の観戦が可能だ。そこには、電動化時代のレースならではの興奮と感動のドラマが待っているはずだ。(文:みらいのくるま取材班)
『2021全日本EVグランプリシリーズ』レースカレンダー
第1戦 4/10 富士スピードウェイ 55㎞
第2戦 5/5 袖ヶ浦フォレストレースウェイ 55㎞
第3戦 6/6 筑波サーキット 55㎞
第4戦 7/4 スポーツランドSUGO 55㎞
第5戦 8/8 ツインリンクもてぎ 55㎞
第6戦 10/3 筑波サーキット 60㎞
第7戦10/31 袖ヶ浦フォレストレースウェイ 60㎞
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