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第26回 日本EVフェスティバル レポート④ – EVオーナーは環境性能に加えて走りに惚れて購入を決めている。

2021年1月15日更新



現在の日本における電動車の普及率はハイブリッド車までを含めればかなり高いが、ことEVに絞るとその普及率は1%未満ととたんに低くなる。

今後、国の電動化施策と自動車メーカーのそれへの取り組みが充実していけばこの状況も大きく変わっていくだろうが、今のところは、EVの価格が高めであることや、「充電が面倒」「電欠すると嫌だ」といった不安があるからか、ユーザーの食指がなかなか動かない状態なのである。

では、そんなマーケット状況であるのに、約1%の人たちはいったいなぜEVの購入を決意するに至ったのだろうか? 購入できる資金的余裕があったにせよ、彼ら彼女らは購入後のカーライフにおいて本当に「買ってよかった」と感じているのだろうか?

今回の日本EVフォスティバルの〈気候非常事態宣言EVシンポジウム〉の後半では、3名のEVオーナーによるパネルディスカッションが行われた。ここでのテーマは「私たちのCO₂削減作戦」というものだったのだが、EVオーナーの本音トークが展開され、上記の素朴なギモンへの回答となる発言を数多く聞くことができた。

コーディネーターである鳥塚俊洋氏(JAFメデイアワークス)が投げかけた質問のもと、EVオーナーである渡辺俊介氏、江守広章氏、中村さつき氏がそれぞれ発した言葉の一部を、編集を施した形で紹介していくことにする。

写真左からコーディネーターの鳥塚俊洋氏、EVオーナーの渡辺俊介氏、江守広章氏、中村さつき氏



エンジン車のときより
遠距離を走るようになった

鳥塚 まず、自己紹介していただくとともに、愛車の車種と普段の使い方について教えてください。



中村 埼玉県在住の中村です。もとは初代リーフのオーナーで今はリーフe+に乗っています。普段は通勤と買い物用に使っていて、たまに仙台とか京都とかまで行くときにも使っています。以前にガソリンエンジン車に乗っていたときにはこのような遠出は新幹線移動にしていたんですが、EVは運転していて気持ちがいいし疲れないから、今はどこにいくにもクルマでの移動になっているんです。

江守 埼玉県の熊谷市で農業を営んでいる江守です。私も最初は初代リーフに乗っていて、今は中古で買ったテスラに乗っています。それから、仕事用としてミニキャブ・ミーブも持っています。使い方は中村さんとほぼ同じで、短い距離、長い距離問わず、どこにでかけるにもEVという感じになっています。九州までも、もう3回ほど往復しました。高速道路をEVで走ると、とにかく気持ちがいいんですよね。

渡辺 長野県白馬村にある小さな宿を家族で経営している渡辺です。白馬EVクラブの事務局スタッフもやっています。宿をやっている関係で何台かクルマがあって、そのうちの一台がEVのミニキャブ・ミーブです。使い方は、最初のうちは主に日常の買い物用だったんですけど、宿のお客さまの送迎用にも使うことがあります。ほかにもクルマがありますが、年間トータルの走行距離はミニキャブ・ミーブが一番多くなっています。

購入動機は環境意識と
走りの楽しさ

鳥塚 地球温暖化をもたらすCO₂排出量の削減に向けて、世界の主要国のいくつかが、近い将来にすべてのクルマの販売を、EVをはじめとした電動車に限る規制を始めようとしています。そんな中において、皆さんはすでにEVに乗っていらっしゃる。早くに購入を決めたのは、やはり環境のことを意識したからだったのでしょうか?



江守 私はもともと新しモノ好きというところがあるんですけど、最初にリーフを買ったのは、試乗してみて「おお、すごい走りだ!」と感動したのがきっかけです。今乗っているテスラは、走りに加えて安全性をポイントに選びました。購入動機として、EVに乗ってCO₂を削減しなきゃという思いはまったくありませんでした。EVの環境性能の良さを意識するようにはなったのは後のことです。「毎日これに乗ることが、CO₂削減に繋がるんだよな」って感じで(笑)。

中村 子どものころに親から「トンネルをクルマで走るときには窓を閉めなきゃダメ」って言われて、クルマは吸っちゃいけないものを排出している乗り物だってことに気がついた。そして、そのお陰か、何も排出しないEVの良さを高く評価できる大人になれた。だから、環境意識が購入の決め手でしたが、実際にEVに乗ってみたら想像のはるか上をいく走りの楽しさを感じました。

渡辺 ミニキャブ・ミーブはもともと白馬の観光に関連した環境問題に取り組んでいた父が購入したので、購入動機が環境意識といえるところは多分にあったと思います。でも、実を言うと、試乗してみたらEVのミニキャブ・ミーブが二駆にも関わらず雪道でもすごく運転しやすいクルマだと気づいたのが購入の決め手となった部分もあった。だから正しい購入動機は、「環境によくて、すごく使えるクルマだったから」ということになるでしょうね。ちなみに、現在、主な使用者である私が頻繁に乗っている理由は、とにかく運転が楽で楽しいから。環境にいいからというのももちろん重要なことです。

自宅充電ができれば
EVの“弱点”は感じない

鳥塚 最後に、一般的にEVの弱点と言われていることについての質問です。「航続距離が短い」「充電時間が長くかかる」「充電施設そのものも足りない」などが言われていますが、皆さんは実際に乗っていて、これらの問題についてはどのように感じているのでしょうか?



渡辺 私の場合は、ミニキャブ・ミーブを買う時点において、それまで普段の買い物用として乗っていた軽自動車の代わりにすることを決めていたので、実質的な航続距離が100㎞程度でもまったく不安はありませんでした。実際、使い始めたら、夜間に自宅で充電するだけで問題なく走り、電欠することもなかった。バッテリー容量が小さい軽自動車のEVですが、使用目的とピッタリ合っているので使い勝手は良好です。最近は、バッテリーが大きくて航続距離が長いEVも出てきていますが、大事なことはライフスタイルに合ったクルマの選択をするということだと思います。

中村 私が初めてリーフを買った頃はまだ充電設備のあるところが少なかったですが、このごろは充電設備もそれなりに充実してきたと思います。そもそも満充電で実質350㎞ぐらい走れるリーフe+に乗り換えからというもの、よほどの遠出でない限り外で充電することがほとんどなくなっています。もう夜に家で充電するだけで十分という感じ……。たぶん、航続距離や充電の部分がEVの弱点だと言っている皆さんは、実際にEVに乗ったことがないからそんなことをおっしゃっているのだと思います。乗れば、それは誤解に過ぎないってことがきっとよくわかるはずなんです。

江守 私もお二人と同意見。基本的に充電は自宅で済んでいますし、県外に行くときだけ目的地周辺に充電器があるか意識する程度です。まあ、あえて苦言を呈するなら、高速道路のSAなどの充電器が、1ヵ所での設置数が少ないために休日などは充電待ちの渋滞が起きているので、SAなどでは充電器の台数を増やしてほしい。それから、そんな渋滞があるにも関わらず充電が終わってもクルマを放置している人がいて、待っている人とトラブルに発展することがあったりもするので、それは改善すべきだと思う。ちなみに、テスラのスーパーチャージャーステーションの場合は充電終了の知らせがスマホにくるようになっていて、5分以内に移動しないと分単位で超過料金を課金され、クレジットカードの口座から引き落とされるようになっています。そういうサービスやシステムの進化も必要なんじゃないかと思います。

環境に良くて気持ちのいい走りをするEV。弱点と言われる部分も使い方次第で弱点でなくなるEV。「乗ってみたいが……」と迷っている皆さん、トークショーでの三人の話を追い風に自分自身のEVシフトをしてみては。きっと、「いいクルマを選んだなあ」となるに違いない。



① Honda eも「みんなでCO₂削減!!」へ向けたさまざまなる意匠の一つ。

② エクリプスクロスPHEVは、エンジン車から乗り換える電動車として“賢い選択”といえそう。

③ 三菱自動車はCO₂排出量が最少となるPHEVを中心に電動車比率を高めてゆく。

④ EVオーナーは環境性能に加えて走りに惚れて購入を決めている。

⑤ 世界地図を描き変える勢いでみんなで手を組みCO₂排出ゼロを目指そう

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