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クルマのトラブル「もしも」マニュアル

Vol.54 タイヤの空気圧チェックをサボってると、高速走行中にバーストして大変なことになっちゃうかも!(前編)

2020年11月26日更新



【今回のやっちゃったストーリー】

月に一度のペースでグルメ店めぐりをし、そのときの写真をSNSでアップするのを趣味にしているW子さん(会社員・22歳)。以前は電車やバスが足だったので県内か隣接県にあるお店を訪れるのがせいぜいだったのだが、2年ほど前に軽自動車の新車を購入してからは、けっこう遠くの県のお店にまで行けるようになっていた。それにともないSNS上の「いいね!」の数も順調に伸び、W子さんは自己承認欲求を高いレベルで満たすことができていた。
「やっぱり、自由に遠くまで行けるクルマっていいわ」
ちなみにその愛車、無料の新車点検を受けて以降はぜんぜんメンテナンスしていなかった。常に絶好調で走ってくれていたので、日常点検や定期点検が必要という意識がすっかり薄らいでいたのだ。なんなら、「その時間とお金、グルメ店めぐりにつかったほうがいいわよ」とさえ考えるほどだった。
この週末も、W子さんはセルフのスタンドでガソリンを満タンにしただけで100㎞ほど離れたところにある有名レストランを目指して高速道路に乗り入れていた。そのお店は平日の仕事の合間に小まめにネットをチェックして見つけためもので、既にきっちりと予約を入れておいた。グルメに関しての準備は常に万全だった。
「今日も、おいしいモノを食べて、いい写真を撮って、『いいね!』をいっぱいもらっちゃうわよ!」
意気軒昂なW子さん。だが、目的地近くの高速道路出口まであと5㎞となったあたりで思いもしなかったトラブルに見舞われることに――。
走行車線を巡航していたところ、突如クルマが小刻みに振動し始めた。と、直後に左前方でパンッと大きな破裂音がし、急激にクルマが左側の路肩方向へと軌道を変えだした。
「わっ」と思ったW子さん、パニックに陥りながらも、ガードレールにぶつからないよう必死に操作。なんとか激突をまぬがれて、クルマを路肩内にストップさせることができた。ふう。
W子さんは急いでクルマの外に出て、音がしたあたりをチェック。すると、左側のフロントタイヤがまるでボロ雑巾のようにぐちゃぐちゃになっているのが目に入った。タイヤのバーストだった。
「た、たいへん!」
W子さんは慌ててスマホを取りだし、路肩内に立ったままどこかに電話をかけはじめた。
「あ、すみません、午後1時にランチの予約をしてたA山W子です。じつはクルマがパンクしちゃいましてですね、予約の時間に遅れそうなんですよ。ええ、ええ。必ず行きますけど、とりあえず、ご心配かけないよう早めに遅刻のご連絡を入れおかなくちゃと思いまして……」
いやいやいやいや、W子さん、それ、いまやることじゃないでしょ。急いでやらなきゃいけないこと、ほかにいっぱいあるでしょ!

高速道路上の故障は
タイヤが6割を占める


国土交通省とJAFは、毎年、共同で「路上故障の実態調査」を行っています。

それによると、例年、道路上でのクルマの故障の中で一番多い部位はタイヤとの結果がでています。

特に高速道路上でのそれは多く、例えば2019年9月~11月に行われた調査では、発生したタイヤの故障件数の割合は全体の6割(58.7%)にものぼっています。



タイヤが破裂するバーストは
重大な事故へと繋がりやすい

このタイヤの故障、代表的なものとしてはパンクとバーストがあります。両者はよく「パンク」と一口に括られがちなのですが、厳密にいうと異なる現象の故障です。

パンクは正確にはスローパンクチャーといい、主に路上にあるクギなどの異物を踏んだことで徐々に空気が抜けていく現象を指します。

一方のバーストはもっと激しい故障で、走行中に突然タイヤが破裂する現象を指します。原因としては、縁石などに強く当たる、あるいは落下物などを踏むなどしてタイヤを傷めてしまうといった外的なものと、空気圧不足の状態で走行することによってタイヤの変形・過熱を生じるという、点検不足に由来する要因が挙げられます。

「空気圧不足でタイヤがバーストする」ということについてはイメージしにくいかもしれませんが、空気圧不足の状態だとタイヤの弾力が失われているために、タイヤのゴムがたわんで変形し、タイヤの側面が波打つ「スタンディングウェーブ現象」が起き、危険な発熱を引き起こします。その結果、タイヤ内部の構造が損傷し、破裂に至るのです。空気圧不足のほか、過積載やタイヤの劣化もバーストの原因になるので、注意が必要です。



徐々に空気が抜けるパンクも怖いですが、高速走行中にタイヤが突然破裂するバーストの怖さはそれをはるかに上回ります。ハンドルが取られてアンコントローラブルとなり、重大な事故に直結することが往々にしてあるのです。

今回のW子さんのケースでは事故にまでは至りませんでした。しかし、危機一髪だったのは間違いなく、助かったのはたまたまと見ておくべきでしょう。

そう、タイヤはクルマの部位としては地味で目立たない存在ではあるものの、バーストという故障はどの部位の故障よりも危機的状況を招いてしまう可能性が大。十分に気をつけましょう。

タイヤの空気圧チェックをサボってると、高速走行中にバーストして大変なことになっちゃうかも!(前編)

タイヤの空気圧チェックをサボってると、高速走行中にバーストして大変なことになっちゃうかも!(後編)

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