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2020年3月19日更新
姉川氏へのインタビュー第3話は、2019年10月に設立された株式会社e-Mobility Power(イーモビリティパワー、姉川氏は取締役会長を務める)が取り組んでいる急速充電器の増設に関しての話。その話をトータルすると、日本の充電環境は、今後急速に充実していくという予感をおぼえた。
原発事故で一時協議会を離脱
CHAdeMO協議会の設立を経て、理想の急速充電インフラ構築に向けて精力的に活動を行っていた姉川氏だったが、その1年後に東京電力の原子力部門に戻らざるを得なくなる。2011年3月の東日本大震災によって発生した、福島第一原子力発電所事故の事後対応を担わなければならなかったからである。改めてCHAdeMO協議会などのEV関連の仕事に復帰したのは2017年になってからのことだった。
——2011年から約7年間、元の原発の仕事に従事されています。その間、CHAdeMO協議会はどのような体制で動いていたのですか?
姉川 東京電力が積極的に関与できなくなったので、CHAdeMO協議会にご参加いただいた自動車メーカーさんたちに事業を託しました。また、本来なら東京電力が主導してやるべきだった急速充電器の設置や料金サービスを展開する日本充電サービス(2014年設立)の仕事も、同様に自動車メーカーさんたちにお任せすることになりました。皆さんには、本当に長らくご迷惑をおかけしてしまいました。
——しかし、2017年にCHAdeMO協議会に復帰され、翌2019年には会長に就任されました。さらに、e-Mobility Power(イーモビリティパワー)を立ち上げ、この会社でも会長となり、日本充電サービスからの事業の引き継ぎを主導されました。
姉川 はい、ありがたいことに、なんとかEV関連事業に完全復帰を果たすことができました。今、遅れを取り戻すべく、積極的に動き始めています。
出力バリエーションのある増設
東京電力と中部電力の共同出資によって設立されたe-Mobility Power(イーモビリティパワー)は、急速充電器の設置や充電サービスなどの事業を行う会社。姉川氏はここで、充電サービスの一つの課題となる、高速道路のサービスエリアなどでの充電渋滞を解消することに取り組んでいる。
——設立から半年ほどですが、e-Mobility Power(イーモビリティパワー)ではどのような仕事に力を入れていらっしゃいますか?
姉川 やるべきことはいっぱいあるんですけれど……取り急ぎ、急速充電器の増設に力点を置いた活動をしています。
現在、日本全国には急速充電器が約7,000台、普通充電器が約18,000台設置されていて、私としては十分な数に近づきつつあると見ていますが、高速道路のSA(サービスエリア)やPA(パーキングエリア)など利用が頻繁な場所においては設置台数が足りずに充電渋滞が起きており、EVをはじめとする電動車のオーナーの皆さんにかなり不興を買っているという事実があります。まずは、それをなんとかしたいんです。
——各サービスエリアに何台増やす計画なのでしょうか?
姉川 場所によって利用頻度が異なるし、サービスエリアを運営する会社側の判断もあるので、一律に何台増やすということにはなりません。場所ごとの状況に基づいて、適切な数を決めていきます。
例えば、中央自動車道の談合坂のサービスエリアは規模が大きいわりに上下とも40kWの充電器が2台ずつしかなく、たびたび充電渋滞が起きているので、3倍ぐらいにするのが妥当ではないか……などと考えたりしています。
——大きなサービスエリアで利用頻度が高くて混みやすいところは倍加するかも知れない、と。
姉川 はい。ただし、そんな風に数を増やす場合でも、同じ場所で同じ出力の急速充電器を並べることにはならないでしょう。たとえば50~100kWの大きな出力のものがあれば、40kWや20kWといった中小のものも揃える可能性があります。
というのも、テスラなどの大容量バッテリーを積んだEVが走り出している一方、そこまでではないリーフ、さらに小さいバッテリー容量のi-MiEV、アウトランダーPHEV、プリウスPHVといった電動車もたくさん走っています。だったら、それぞれに見あった出力の充電器のバリエーションを揃えるカタチにすべきだろう、ということです。そもそも大きな出力のものばかりを並べると、コストがかかってしまいますしね。
——なるほど……。では、充電渋滞の解消はいつごろ実現するのでしょうか?
姉川 急速充電器の増設は、各サービスエリアの実情や設置の総コストなどを勘案しながら進めるので、すぐに一斉の設置とはなりません。渋滞が激しいところから順次増やしていくことになるでしょう。もちろん、なるべく迅速にやるつもりではいます。EVやPHEVに乗っていて充電渋滞にでお困りの皆さんには、もう少しで増設を開始しますのでご理解ください。
商業施設も充電インフラに
急速充電インフラの整備は高速道路のSA・PA以外にも、交通社会のさまざまなところで進みつつある。姉川氏は、e-Mobility Power(イーモビリティパワー)のもう一つの大きな活躍の場として「商業施設」を挙げた。
——高速道路SA・PAの急速充電器増設以外で、e-Mobility Power(イーモビリティパワー)が積極的に取り組もうとしていることは何でしょうか?
姉川 郊外の主要な幹線道路沿いにある大型ショッピングモールやスーパーマーケット、コンビニエンスストア、道の駅などと協力して、今以上に充電器の設置を進めることに力を入れていきたいと思っています。
道路沿いのいろんなところに充電器があれば、「いつでも、すぐに充電できる」から便利で安心なのはもちろん、「変に電欠を怖がることなく運転ができる」という、心の余裕をドライバーに与えられます。そうなることが、電動車の本格的な普及への大きな弾みになると見ているんです。
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