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みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
2019年11月11日更新
日産とトヨタ、日本を代表するこの2社が東京モーターショー2019で展示していたEVコンセプトカーは、いずれもかなりリアルなつくりとなっていた。
はたして、それらのEVは、どんな特長・戦略を帯びて市場に登場することになるのだろうか。
日産のEVは
近々3台体制になる!?
日産は、SUVタイプの『ARIYA(アリア)』と軽タイプの『IMk(アイエムケー)』という、タイプの異なるEVコンセプトカーをステージ上に展示していた。
両車ともに発売時期が間近に迫っているらしく、コンセプトカーというよりほぼ実車といっていいほどに現実的なスタイリングに仕上がっていた。現在、日産の市販EVはリーフだけだが、まもなく、いきなり3台体制ということになりそうだ。
より具体的な情報を求め、ブースにいた説明員に、答えにくいであろう質問を含め聞いた。
― 『IMk』と『ARIYA』、発売はだいたいいつごろなんですか?
「だいたい……もうすぐ(笑)。まだ何年何月とまではいえません」
― どっちが先にでるんでしょう?
「『ARIYA』が先で、そのすぐあとに『IMk』がでることになっています」
― それぞれのバッテリー容量とか航続距離は?
「性能面に関しても具体的なことは明かせません。ただ、『ARIYA』に関していうと、航続距離などの性能はリーフe+よりも上になり、SUVのロングツアラーとなる可能性が大きいでしょう。あと、軽タイプの『IMk』はそれほど容量のあるバッテリーは積まないにしても、軽量コンパクトなので、皆さんが想像されているよりも航続距離がでる可能性はあります」
― 『IMk』について伺います。軽タイプのEVとしては、かつて三菱自動車のアイ・ミーブがありました。しかし、EVの先駆けだったこともあって性能のわりに高価で、それが普及を阻んだところがあります。この『IMk』は、そうした問題点を解消してくれる一台になりますか?
「発売時の価格をいくらにするかは経営者判断。一社員の立場でいえることではありません。とはいえ、『IMk』はEVをより普及させてお客さまの数を増やしていくことを使命としているクルマであることはたしか。相応の頑張りはあるでしょう」
― ちなみに、『IMk』は、『デイズ』と『ekワゴン』の関係のように、アライアンスを組んでいる三菱自動車と共同で開発・販売することになるのですか?
「展示されているショーカーのデザインについては日産オリジナルです。今後、実際の販売に向けての機構を含めた開発段階になったら共同ということもあるかも知れませんが……そのあたりについても、いまの段階では何ともいえません」
― なるほど。では、『IMk』の日産オリジナルのデザインに関ついて、解説をお願いします。
「『IMk』だけでなく『ARIYA』もそうなんですが、JDNAすなわち日本のDNAをコンセプトにデザインを施しています。それぞれ“粋”“うつろい”“間”“かぶく”といった和の基本ワードを設定し、それらをデザインに昇華させているのです」
― それは日本市場を意識したが故ですか?
「いえ、日本を含めたグローバルな展開を意識しているが故です。われわれは日本の自動車会社なので、そのアイデンティティ=JDNAをもったEVの個性や魅力を自信をもって世界に向けて発信したいと考えています」
トヨタの超小型EVの販売は
受け入れ体制づくりとともに
トヨタは、青海の会場の一角に、2020年の冬に日本で発売する予定となっている2シーターの超小型EV(名称未定)を展示していた。
正直なところ、本格的な拡販を目論むEVには見えなかった。トヨタはこの一台をどのような思いをもって市場に投入するつもりなのだろうか。
会場にいた説明員に、そのへんを中心に話を聞いてみた。
― これは、軽規格のEVですか?
「えーっとですね、いま国において軽自動車の一つ下になる『超小型モビリティ』というカテゴリーの設定が検討されています。それが決まれば、来年の冬の発売時にはそのカテゴリーのEVとして登場することになります」
― 新たなカテゴリーのEV……。どのような使われ方を想定していますか?
「航続距離が100㎞ぐらいになるので基本は近距離用。いまの軽自動車のように二台目として使っていただくことが多くなると思っています。あと、非常に取り回しがしやすいので、免許取りたての方とか、公共交通機関が少ない地域の高齢者の方々に乗っていただくことも想定しています」
― 正直、簡易的なEVというイメージがありますが、トヨタさんらしさは?
「小さいEVでもクルマとしての品質は徹底されます。とくに衝突安全とか踏み間違い防止とかの安全性能はわれわれトヨタの強みなので、それらをしっかり備えたEVとなる予定です」
― 今回のモーターショーではトヨタさんはさまざまな近未来的な電動車や自動運転のコンセプトカーを展示されています。つまりは、この超小型EVだけでなく、今後、さまざまなEVが出ると思ってよいでしょうか?
「はい、これはあくまでEVとして第一弾のモデルで、今後、さまざまな大きさ、性能のEVを市場に投入していくつもりでいます。そして、それは市場の皆さんの要望をお聞きしながら決まっていくことになるでしょう。また、世の中のEVを受け入れる体制と環境の整い具合も、その決定に大きく影響してくるだろうと思っています」
― 「世の中のEVを受け入れる体制と環境」ですか?
「われわれは、EVが新しいクルマだけに、単に開発・販売を進めていくだけでは理想的な普及は叶わないと考えています。EVを販売する方法の確立や整備体制の充実はじめ、中古車販売とバッテリーの査定・リユース・リサイクルが合理的に行える体制づくり、さらには保険の最適化など、トータルでEVを受け入れる体制と環境の整備が不可欠だと考えているのです。お客さまも、それらがちゃんとしていなければ安心できませんし、『よし、EVを買おう』とはならないのではないでしょうか」
― 確かに……。そのために実際に何か始めているのですか?
「まだまだこれからなのですが、われわれは今回のこの超小型EVの開発を機に、今お話した開発・製造から販売、周辺サービス、あるいは中古車販売、電池のりユーズとリサイクルに至るまでをトータルに包括する新しいEVビジネスモデルの創造に取り組み始めています。しかも、それは従来の自社中心のビジネスではなく、志を同じくする法人・自治体の参画を得ながら進める普遍的なビジネスとなる予定です。どうかご期待ください」
ぶっちぎりの勢いでEVの開発と販売を続ける日産、慎重かつ堅実に周辺のビジネス環境の整備も含めてEV開発と販売を進めるトヨタ。それぞれの特色がよく出たEV展示であり、戦略・施策だった。
どちらがいいとか悪いとかではなく、おそらく、本格的なEV普及のためには両方とも大切な取り組みということになるのだろう。今後の2社の頑張りに注目したい。
(1) もうすぐ欧州で“セカンドカー”として走りだすリアルなEVたち
(2) ぶっちぎりでEV化するか、じわじわとEV化するか、それが問題だ!
(3) スズキはいつかきっとリーズナブルな電動車を国内で発売する!
(4) 三菱は進化形のPHEVシステムや電動4WDでSUVを過激に変えていく!
(5) タイヤもCASE時代にふさわしい革新的な進化を遂げてゆく!
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