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クルマのトラブル「もしも」マニュアル
2019年8月20日更新
前編の事例では、友人から借りたクルマを駐車場に駐車している間に当て逃げされてしまったMさんは、自分の保険に自動セットされている他車運転特約を使って修理費用を賄おうと考えたわけですが、実際はそうすることができず、すべて自腹で支払うこととなりました。
駐車場における事故は
運転中の事故ではない
なぜ、Mさんが遭遇した事故では、他車運転特約が使えなかったのでしょうか?
理由は一つ。保険会社のオペレーターが言うとおり、「他車運転特約は運転中の事故に対して補償するものであって、駐車中のクルマの事故の被害には適用されない」からです。
どの保険会社の他車運転特約も基本的に「借りたクルマを運転しているときの事故は補償の対象」としています。しかし、それはあくまで「運転しているとき=走行しているとき」の話であって、Mさんのケースのように「借りたクルマを、高速道路のサービスエリアなどの駐車場に駐車しているときに起きた事故は、運転中の事故とは見なされないため補償の対象外」としているのです(ただし、踏切や信号待ちでの停車時に起きた事故は運転中の事故と見なされ、補償の対象となります)。
駐車するという行為も、借りたクルマを運転している最中の行為であると考えると、ひどく理不尽に思える内容です。しかし、次のように考えると「なるほど……」と納得できるのでは。
他人のクルマを借りた人が駐車してクルマを離れるという行為は、その瞬間にそのクルマを誰が運転しているかをはっきりと証明できなくなることを意味します。もしかしたら、その後に持ち主や他の人が運転する可能性だって十分に考えられるからです。そうした状況で、当て逃げなどの被害を受けたとしても、クルマを借りた人の他車運転特約で補償すべきかどうかの判断はちゃんとは下せません。
だから、駐車中の事故は補償の対象外となってしまうのです。そう、保険は、あいまいな状況下においては補償を発生させることができない厳格な商品ということです。
いずれにせよMさんは、他車運転特約の存在自体は知っていても、こうした補償の対象外となる事故があることについてはまったく知りませんでした。
Mさんだけでなく、多くの自動車ユーザーが自動車保険について、「だいたいこういうもの」という大づかみな理解で契約をしている傾向があります。ですから、一つ一つの特約の詳細まではなかなか目が届かないということになります。
けれども、「もしも」の事故の際は、その目が届いていなかった詳細の部分で対応が分かれることがけっこうあるのです。「もしも」の事故は、自分にとって、「起きてほしくない」もののはずです。そのとき、どうなるのか(自動車保険で何を、どうすることができるのか)ということは、やはり知っておきべきことでしょう。
例えば、更新に際して、保険代理店の担当者に内容説明してもらうことを恒例にするなど、ほんの少しの努力で自動車保険への理解は増します。
補償外となるケースは
保険会社で微妙に異なる
なお、他車運転特約には、その他にも保険金が支払われないケースがあります。
代表的なのが対象車の限定。借りたクルマが一般的な「自家用8車種」(自家用普通乗用車・自家用小型乗用車・自家用小型四輪乗用車・自家用普通貨物車=最大積載量0.5トン超2トン以下・自家用普通貨物車=最大積載量0.5トン以下・自家用小型貨物車・自家用軽四輪貨物車・特殊用途自動車=キャンピング車)のいずれかで、それを運転していて事故が起きた場合は補償の対象となりますが、たとえば“法人所有のクルマ”を運転していて事故を起こした場合は補償の対象外となったりすることもあります。
また、「同居している息子のクルマを借りて事故を起こした場合」も補償の対象外となります。
そのほかにも、対象外となる場合がいくつかあるのですが、これらの内容は保険会社によって微妙に異なっています。
なので、この機会に、ぜひ自分の保険に自動セットされている他車運転特約の補償対象をはじめとした内容について、しっかり把握するようにしておいてください!
借りたクルマが駐車中に当て逃げされた。他車運転特約が使えないって、どういうこと?(前編)
借りたクルマが駐車中に当て逃げされた。他車運転特約が使えないって、どういうこと?(後編)
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