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クルマのトラブル「もしも」マニュアル
2018年5月9日更新
ホンダとともに高いレベルの製品を開発
日本で一番信頼できる緊急脱出支援用具と目されている「消棒RESCUE」をつくっているのは、埼玉県所沢市にある株式会社ワイピーシステム。もともとはメッキ加工をはじめとする金属の表面処理技術の高さで業界に名を馳せている会社である。
そういう会社が、なぜ、クルマの用品である緊急脱出支援用具「消棒RESCUE」を開発し、販売することになったのか? しかも、JIS規格の基準モデルに指定されるほどに高品質なものを。
経緯はこうだ――。
ある日、二酸化炭素洗浄機を納品している取引先の工場で発火事故が起きた。そのとき、その工場関係者が、とっさの判断で普段から機械の洗浄に使っている二酸化炭素洗浄機のガスを噴射した。すると、たちまち鎮火し、事なきを得た。そのことがヒントとなり、まずは二酸化炭素消火具の開発と販売がはじまった。
その二酸化炭素消火具は、鎮火能力が高いうえに、泡の消火器とちがって機械類にかけてもダメージを残さず、人体にも無害ということから、さまざまな業界、そして一般の家庭にも好評をもって受け入れられることになった。
そんななか、自動車メーカーのホンダの開発者からの知遇を得て、車載用の消火機能をもった緊急脱出支援用具を共同開発しようという話が持ち上がった。クルマはもともと予防安全の思想でつくられているが、事故が起きたあとの安全についてはあまりしっかりした手立てが取られていないのが現状で、それをなんとかすべきという双方の熱い思いが合致した結果だった。
ホンダはクルマをつくっているだけに、用具に求める安全基準は極めて厳しいものだった。しかし、ワイピーシステムは、用具に採用する各部品のすべてを日本のトップメーカーから調達する態勢を整えたうえで、自社の高い技術を惜しみなく投入し、そのすべてをクリアしていった。そして、2009年、遂にホンダの純正用品として指定されるほどに高品質の「消棒RESCUE」が誕生することになった。
ちなみに、その高品質さはもちろんのことデザインや使い勝手なども評価され、グッドデザイン賞、日刊自動車新聞社用品大賞など、発売後数年で数多くの賞を受けている。また、ホンダだけでなく三菱自動車などの自動車メーカーからも、次々と純正用品の指定を受けている(JIS規格の基準モデルに指定された経緯については前編で紹介したとおりである)。
使う人の安全を徹底的に考えたデザイン
緊急脱出支援用具「消棒RESCUE」がどれほど高品質なのか、その具体的な内容についてワイピーシステムの社長であり工学博士でもある吉田英夫氏にお話をうかがった。
「まず、形状のことからお話しましょう。世にでまわっている緊急脱出支援用具の多くはハンマー型になっています。しかし、わたしどもの『消棒RESCUE』はボディを逆手で握って使うピック型になっています。どうしてか?といえば・・・。
消火器のボンベを備えているためということもありますが、そもそもハンマー型はウインドウを叩く際、使いにくいのです。限られた車内空間で、肘を軸に腕を回転させてウインドウを確実に叩き、ガラスを割るにはピック型が適しています。
それに、ハンマー型だと、ウインドウを叩こうとして先に手が当たってケガをするという危険性もあります。実際、開発段階でハンマー型を検討していたときに、社員の手が傷つくというアクシデントが起こりました。けれども、ピック型だとそういうことはありません。だから『使う人の安全を徹底して考えるならピック型しかない』となったわけです」
「製品デザインは、有名なプロダクトデザインカンパニーであるフィアロさんにお願いしました。あのホンダのNSXをはじめとする数々の名作を生んでいる会社です。フィアロさんにお願いしてよかった点は、“形のカッコよさ”だけではありません。だれでも握りやすくなっているうえに、“シートベルトを切る刃の部分に子どもの指が入らないようにする”といった安全設計も徹底されています。『消棒RESCUE』がグッドデザイン賞を取れたのは、こうしたトータルなデザインが高く評価されたからだと思っています」
スムースな脱出を可能にする
高品質のカッターと超硬金属の突起
「部位ごとの性能もきわめて優れています。まず、シートベルトを切るための刃ですが、これは日本を代表するカッターメーカーのオルファさんと共同開発したものを採用しています。試してみればすぐにわかりますが、とにかくよく切れます。シートベルトの布は2トンのものをぶら下げても千切れないほど強靱なのに、それがチカラを入れずともスパッ、スパッと非常に小気味よく切れるのです。そして、その切れ味が長くもつのも大きな特長。JIS規格では30枚のシートベルトがそれぞれ2秒未満で切れることが基準となりますが、『消棒RESCUE』の刃はそれを優に超える耐久性をもっています」
「ウインドウの強化ガラスを割るための突起部分には、高品質の超硬金属をつけています。試験では、わずか20センチの高さから垂直落下させただけでガラスを割ることができることが証明されています。具体的な使用シーンでいうなら、チカラの弱い高齢のご婦人でも肘から先のストロークだけでウインドウがカンタンに割れるということ。たとえば横転事故のように、体勢に無理がある状態でもそれが可能となります。もちろん耐久性も抜群。何回ガラスを割っても先端が潰れることはありません」
105℃のなかに400時間置いても大丈夫
吉田社長の話はまだつづく。じつは、購入した人が気づきにくいところにも、高性能のこだわりが詰まっているという。
「それは耐熱性です。クルマのフロントガラス直下のダッシュボードは、南国の夏であれば80℃から100℃近くまであがることがあります。そうした過酷な環境下では、普通のプラスチックを使っている緊急脱出支援用具なら変形してしまい、“切る”“割る”といった脱出のための破壊行為ができなくなってしまうことがあります。
しかし、『消棒RESCUE』は105℃のなかに400時間置いておいても変形しない耐熱樹脂を使っているので、常に“切る”“割る”ができる状態が保たれます。もちろん消火器のボンベの耐熱性も同様。なにしろ火のなかに入れても爆発しない構造となっているので、どんなに暑い地域であっても安心して車内に搭載しておけます。こうした耐熱性は、当初の開発時期にホンダから条件設定されたものですが、それを乗り越えることで、真に安心・安全な製品に仕上がったと感じています」
人の命を守るためには、「過ぎたるは及ばざるが如し」ということはない。消費者感覚からしても、「消棒RESCUE」は決してオーバークオリティではなく、まさに信頼できるスペックということができるだろう。
ちなみに、JIS化に向けた動きの中で、2017年11月9日に実施された実地調査には、消費者代表ともいえる主婦連合会からも4名の参加者を得て、リコール後に改良された他社の緊急脱出支援用具と「消棒RESCUE」が試された。結果的に、窓ガラス粉砕とシートベルト切断実験において、両方の目的が達成されたのは「消棒RESCUE」のみであり、その事実は「主婦連たより」にも掲載された。
【番外編】緊急脱出の準備、できていますか!? JIS適合の「消棒RESCUE」が頼りになるワケ(前編)
【番外編】緊急脱出の準備、できていますか!? JIS適合の「消棒RESCUE」が頼りになるワケ(中編)
【番外編】緊急脱出の準備、できていますか!? JIS適合の「消棒RESCUE」が頼りになるワケ(後編)
【製品情報】
・消棒レスキュー ・・・・・ 定価6,000円
・消棒ライフセーバー ・・・ 定価3,000円
※消費税・送料・代引手数料は別途
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